潮風の匂い ページ24
荒い足音が聞こえる。その音をBGMに魔人は本を捲るのをやめない。テーブルの上には少し冷めた紅茶がひとつ。刹那、紅茶が波打つほどの威力でドアが開け放たれた。
「ッフョードル卿!!!」
急いで来たのか、息を切らしながら目の前のロシア人に声をかけた人物は、白い肌に白く長い髪、そして何より特徴的なのが朱の瞳という浮世離れな容姿をしていた。息も絶え絶えにフョードルのもとへと駆け寄る。
D「そんなに急いで…何かありましたか?澁澤殿」
澁「死神が帰って来たのか!?」
わなわなと全身を震えさせるコレクターこと澁澤龍彦は、喉から手が出るほど欲しい玩具が目の前に吊るされているような感覚に襲われる。
D「あぁ、その事ですか」
澁「私は死神のあの目が忘れられない…黄金色の目も実にいいが、何より眼帯の下に隠された血よりも濃い真紅の瞳…此処にいるのだろうフョードル卿!ぜひもう一度会わせてくれ!」
D「残念ながら、貴方の求める彼の人はもう此処にはいませんよ」
丁度数日前に此処を出ていきました、と言葉を続けるフョードル。
澁「そんな…どうすれば、またあの瞳を見れる…?」
その場で崩折れる澁澤を尻目に、フョードルは冷めてしまった紅茶を胃の中にすべて流し込んだ。
D「なら、一緒に見にいきますか」
澁「……!」
D「なにも難しい事ではありません。僕と貴方が組めば、お互いの目的は自ずと達成できます」
澁「ッしかし、私は死神の居場所を知らない…!」
D「澁澤殿お忘れですか?鼠はどんな所にもいるんです」
澁「………何処に行けばいい?」
D「海を越えた東洋の島国にある、ヨコハマという街へ」
船の汽笛音。潮風の匂い。少し坂を登った所にあるのは、港の見える丘公園。平日にもかかわらずこの街は観光客で賑わっている。この場所は名称に丘が入っているだけあって、街並みを一望出来る名スポットだ。海を背に街並みを懐かしそうに眺めている、全身を黒で身に纏った鴉が一羽。
『帰って来たよ、 』
その後に続いた言葉は、風の音によって掻き消された。
第三.五幕 完
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生命の輝きおじさん登場です映画の伏線的要素を入れて見ましたでっぷるもいつか書きたい…
後ちょっとで本編です!すみません寄り道大好き人間なんです!此処まで読んで下さりありがとうございました!
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時