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ぐ、と腕に力が入るのにつれてどちらから聞こえてくるのか分からない心拍音。背中に回されている太宰の手が微かに震えているのを感じる。
『こういう事には馴れてるんじゃないのか?』
太「初恋相手なんだから緊張するに決まってるでしょ…」
チラリと垣間見えた太宰の耳は真っ赤になっていた。なんだ、素直な所もあるじゃないか。少し笑みを浮かべた後ぽつりと呟き始める。
『…織田作に、』
太「うん」
『最期、また100年後に会おう。生きろって言われたんだ』
太「…うん」
『だから自分は100年は死ねそうにないんだが…それでも、いいか?』
目線を合わせるのと同時に、太宰の右手がAの前髪を優しく搔き上げる。そして額に軽く唇を落とす。
太「もちろん。死んでも離さないつもりだから覚悟してね」
にこりと微笑む太宰。『うわ怖』「えっ酷くない?」と他愛も無いやり取りをした後、笑顔が溢れる二人。
太「私はね、人を救う側になれと言われたよ。その方が幾分かは素敵だと」
『ふふ、織田作らしいな』
『なら、そんな織田作の言葉を後押ししてやろう』と言いながら自分の携帯を取り出す。首を傾げながら待っていると、差し出された画面には一軒の居酒屋を示す地図。
太「ここは…?」
『行けばわかるさ』
兄さんはこの手に関しては嘘はつかない。そう確信した太宰はその居酒屋を脳にインプットする。
『お前が此方側から抜けるのには時間がいる。だから、恐らくお前とは暫く会えない』
太「ッ…そう、だね」
『それに、自分も少しやり残した事があるから』
それは…と聞こうとした太宰だが口を紡ぐ。それに気づいてか、一瞬微笑むと太宰の頬を摘むA。
太「!ちょっ『すぐ戻るから、そんな顔すんな』……わかった」
別れの言葉は必要なかった。それをお互いに理解してか、もう一度唇を落とす。陽の光が街を照らすのを合図に、二人はこの街から姿を消した。
後日
Aに言われた通り、居酒屋へと足を運んだ太宰はある人物を見つけて1人納得する。そこにいたのは内務省異能特務課長官、種田山頭火。
前の椅子に座り声をかけると、別段驚いていない種田に、改めてAの顔の広さに驚きつつも、本題に入る為太宰は口を開いた
太「人を救う仕事はできますか?」
第三幕 完
これにて黒の時代編は終わりです!ここまで読んで下さり本当にありがとうございました!!
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時