もう1人のマイキー【東卍】

42話 金と黒 ページ45

空が橙色から鈍い鉛色になっていく。夏の季節だと、この時間はまだ昼間と呼べるほどに明るい。しかし今は冬が差し迫った季節。空の色と連動するように気温も下がる。そろそろ吐く息も白くなってくる頃だろう。そんな寒空の中、Aは愛機にまたがりいつものように走っていた。しばらく走った後、目についたポストの前で愛機を止める。数秒かじかむ手を擦りあわせると、ダウンジャケットのポッケにしまっていた一通の手紙を投函する。



『はー…さみ……ッくしゅん！』



そういえば今朝エマが、今日は一段と冷えるからちゃんと着こまなきゃダメだよって言ってたな…。赤い鼻をズビズビさせながら妹の発言を思い返す。とくに寒がりなAは、夏生まれだからかどうかはわからないが、冬が苦手だったりする。マフラー持ってこりゃ良かった…と再度冷えた手を擦り合わせる。



「おいおいかっけーバイク乗ってんじゃんガキ」



声のする方へ顔を向けると、高校生くらいの特攻服をきた不良3人。Aとバイクを見ながらにやにやと笑みを浮かべている。



『何か用？』


「あ？口の聞き方がなってねーなクソガキ」


「お前にはもったいねーバイク、オレ達が貰っていってやるよ」


『オレよりよえーヤツがコイツ乗りこなせるわけねーだろ』



Aのその言葉に低い沸点を上昇させた不良たちは、威勢よく声を上げAの胸ぐらを掴むと空いた右腕を振りかぶり、勢いよくAの顔めがけて下ろそうとした刹那、第三者がその腕を横から掴む。



「テメェら誰に手あげてんだ、離せ」


「えっ……乾さん…！？」



動揺する不良達を他所に、そのまま拳を振り下ろす。顔面にもろ右ストレートがきまったソイツは、鼻から大量の血を流し軽く後ろへと吹っ飛んだ。



『(いたそ〜……)』



うげ、と軽く舌を出すAとは裏腹に、乾と呼ばれた男は無言で3人へと歩み寄ると制裁と言わんばかりに拳を振るっていく。数分後、乾が満足したのが先か向こうが意識を失ったのが先か、振り下ろす拳を静かにおさめくるりとこちらへと近づいてきた。



乾「ケガはないか、若」


『いやオレもう15だぜ？青宗』


乾「……！」


『ンな驚くこと？』



ぷっとAが吹き出す。相変わらずの天然さがツボに入ったのかくくくと腹を抱えて笑うと乾は少しむっとした顔をする。



『はー笑った…久しぶりだな青宗』


乾「あぁ、若も元気そうでよかった」

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