もう1人のマイキー【東卍】

37話 One for all ページ40

一虎の瞳が、まるで水面のように大きく揺れる。そんな一虎を前にAは微笑む。



『オマエを許す！』



その瞬間目を開き、俯いたままだった一虎がふらりとAへと近付く。マイキー達が微かに体を強張らせるが、Aは変わらず無防備なまま。ぴたりと前で止まった一虎は、その口を数回開閉しながら小さく声を発した。



一「…オレ、オマエの事傷付けたんだぜ？」


『うん』


一「ッ兄貴、やっちまったんだよ？」


『うん』


一「…〜ッなのに、ッまだ、Aのダチでいていーの？」


『オマエはオレのダチだ、一虎！』



瞬間、堰を切ったように一虎の大きい目から大粒の涙がこぼれ落ちる。ごめん、ごめんなと嗚咽まじりに謝り続ける一虎をあやすように、Aは両腕いっぱいに一虎を抱きしめる。



『(これでいいよな、シンイチロー)』



周りも緊張の糸が解けたのか、まるで先程まで殴り合いのケンカをしていた緊迫した空気はどこへ行ったのやらどんちゃんと騒ぎ始める。



ド「…やっぱアイツすげーわ」


三「ホント、オレらじゃ到底無理だな」



少し遠くで肩を並べ改めてAの存在のデカさに感心するドラケンと三ツ谷。それを近くで見つめていたマイキーに場地は声をかける。



場「…一人一人がみんなの為に命を張れる、東卍はそんなチームだ。だから、何があっても一虎はオレらの仲間だ」


マ「…正直、オレはAほど大人じゃない。こんな今でも一虎を憎いと思う気持ちはある。だけどさ、Aはちゃんとアイツと向き合った。だから、オレもちゃんと向き合うよ、場地」



未だにわんわんと泣き喚く一虎を見て、マイキーが頬を少し緩めたのを見て、場地も頬が緩む。



場「(ありがとな、A)」



一虎の背中をぽんぽんと叩き、おーよしよしと言えば先ほどよりも格段に泣き声をが大きくなる一虎に、笑いが込み上げる。軽口を叩いてやろうと口を開いた瞬間ゴポ、と口から何かが込み上げ出てくる。



『(やば、い…意識が…)』


一「！…A…？」



背中に回っていた腕の締め付けがなくなり、Aが一虎へともたれ掛かる。一虎の左肩が何かに濡れたように生暖かい。恐る恐る己の肩を見れば、大量の血。そしてAの口端が真っ赤に濡れていた。



一「A…？ッA！！！」



周りもその異変に気付き、Aの名前を呼ぶ。Aは、遠くから聞こえるサイレン音とみんなの声を最後に意識を手放した。

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