手品９ ページ10
「ふぅーっ……」
「お疲れ、田中」
「おう」
練習を始めて一時間くらい経った。田中と１年の方はまだパス練習のみをやっているようだ。
休憩がてら眺めてはいたが、チビのレシーブはバレー経験者にしては何故か素人感を感じた。
人のこと言えた口じゃないけど、下手くそなレシーブだなぁ。
不思議に思った俺は隣で休んでいる田中に聞いてみる。
「あのチビ、経験者なんだよな?」
「んあ? あー……まぁ、一応な」
「と言うと?」
「去年アイツ等の試合見たんだけどよ、ほとんどのメンバーが素人同然で、強豪の北一……影山のチームにボロ負けしてた。名前も聞いたことない中学だったし、多分まともな練習できてなかったんだろうぜ」
「……ふーん」
「ボェ―――ッ」
ズッコケて顔面から倒れたチビに向かって影山が怒鳴る。
迫力すげえな。頑張れ、チビ。
「……ちょっと行ってくるわ」
「おー、がんばー」
言い合いになりそうな二人の間に田中が入っていった。
ちゃんと先輩してんなー、と思ったらまだ少し情けなくて思わず笑ってしまった。
「笑うな奇田!」と怒られたけど知らないふりを通す。
大地さんが怒ると恐いってのは同意するけどな。
俺も始めるか、と立ち上がったその時、ガラリと扉の開く音がした。
そちらを見ると、いたのはシューズを持ったスガさんだった。
なんでスガさん? まだ６時過ぎだよな……?
そんな俺の疑問を田中が代弁してくれた。
「だってお前昨日明らかにヘンだったじゃん。いつも遅刻ギリギリのくせに奇田に鍵の管理代わってくれって頼んでたりさァ。な、奇田」
「まぁ、分かりやすいですよね」
「うっ……」
「大丈夫大丈夫、大地には言わない! なーんか秘密特訓みたいでワクワクすんねー」
どうやらスガさんは厚意で１年達の手伝いに来て下さったようだ。これからは二手に分かれて練習するらしい。
俺も練習を再開しようと、深く呼吸をして気持ちを切り替えた。
それから暫くそれぞれの練習に集中し、６時半を過ぎた頃。
チビがスパイクを打ちたいと騒ぎ出した。しかし影山は拒否。
本当によくケンカすんなー、ト〇とジ〇リーか。
と、少し面白く思いながら聞いていたが、
「お前は足を引っぱらない努力をしろよ」
「今のお前が、『勝ち』に必要だとは思わない」
などと聞けば、流石の俺も顔を歪める。
いや怖すぎかよ。あんなん面と向かって言われたら心折れそう。
あんま近付かんとこ。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
