手品７ ページ8
つっても、別に俺は３対３に出る訳じゃないし、いつも通り勝手にやらせてもらうかな。
「田中、アイツ等のこと任せるからな」
「あぁ、お前は３対３出ないんだもんな。おう、任せろ! 先輩としての威厳ってモンを見せてやんよ!」
「……程々にしろよ」
全部任せるのは少し不安が残るところもあるが、まぁ……大丈夫だろう。
アイツはああ見えても何だかんだ面倒見はいいんだ。悪いようにはしないはず。
それに、同じチームになる以上、互いが互いに慣れておくべきでもある。
などと考えながらボールを持って壁際へ行こうとすると
「えっ、キダさんも一緒に練習するんじゃないんですか?」
「…………ん?」
もしかしてと思い振り向けば、案の定チビが俺のことを見て小首を傾げていた。
昨日渡したボールには「奇田」と名前を書いていたから、それで俺の名を認識したのだろうことはすぐに思い当たる。
にしても、キダさん……とな。まぁまぁ、よくある間違いだ。１年だしな。大目に見よう。
奥で笑ってる田中は許さん。
真顔でブンッとボールを投げつけて報復を与え、戸惑っているチビには苦笑いを向ける。
「キダじゃなくて、クシダな。あんま見ない名字だからよく間違われんだよ」
「あっ、スミマセン!」
「おう、気い付けてくれなー。んで練習の件だけど、俺は別に３対３出ないしお前等と練習する必要はないだろ?」
「えっ? でも、みんなで練習した方が楽しいですよ」
それは知ってるけども。バカやって騒ぎながら練習すんのは楽しいけども。
俺はその為に今ここに居る訳じゃない。
「楽しむ為に必要なことがあるんだよ」
にっこり。悪意が出ないように笑みを顔全体に浮かべる。これ以上コイツと話をすると面倒になる気配を感じた。
有無を言わさない完璧な笑顔の筈だが、チビはきょとんとした表情のまま俺を見つめてくる。
この曇りなき瞳にどう答えようか考えあぐねていると、向こうから田中が声を掛けてきた。
「奇田は奇田でやりたいんだとよ。時間ないし、早いとこ始めんぞー」
「そういうこった。ほら、行け行け。時間もったいねえぞ〜」
俺がからかうように笑いながらシッシッと手を払うと、チビは尚も首を傾げつつ田中達の方に駆けて行った。その背中を見送って俺は小さく安堵する。
助かった。感謝するぞ、田中。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
