手品31 ページ32
いや……強烈だなぁ〜。
自分じゃどうしようもない時に相手が「任せろ」と言うならそれを信じて頼るしかない、そういう日向の気持ちは俺もよく分かる。
ただ、かつてボロ負けした因縁の相手で、しかも練習であれだけ暴言を浴びせてきた奴を心底信じるなんて、俺には……いや大抵の人には到底出来ないだろう。
相当嫌な印象があるだろうに、なんて奴だ。末恐ろしいな。
田中に頭を撫でくりまわされる日向を見つめながらそんなことを思った。
その後、凸凹コンビの速攻は失敗が続く。先程の奇跡的な一本はやはり偶然か。
あ、顔面いった。ボール見てないからどこに来るか分かんないもんな。
崩れ落ちた日向を見て苦笑いする。
ぺらっと得点表示をめくった縁下が呟く。
「う〜ん……さっきのはマグレかなあ……」
「かもな。タオル要るか。取ってくるわ」
「あ、悪い。さんきゅ」
木下の言葉にひらりと手を振って応じ、駆け足で用具室に向かった。
ワイピング用のタオルを素早く手に取り、日向の元へ持っていく。
「ほら日向、タオル」
「あ、ありがとうございます」
鋭いトスが当たって赤くなった頬を押さえながら床を拭く日向。
「大丈夫?」と清水さんに声を掛けられると、彼は上ずった声で答えながらペコペコと頭を下げた。
そしてふと影山を見上げ、「なにニヤニヤしてんだよ!!」と反省の色が見えないことを責める。
「はは、盛大に落ちたからケガしてないか心配したけど、影山に噛みつく元気があるなら大丈夫そうだな」
「は、はい。すみません、ありがとうございます」
「無理すんなよ」
「オス!」
やる気に満ちた返事と共に返されたタオルを受け取って、元の場所に戻った。
程なくして試合が再開され、山口のサーブを田中がレシーブする。
日向がまた飛び出した。しかしこれまでとは気迫が違う。ぞくりと背筋を嫌なものが走り抜ける。
月島も似たようなものを感じたのか顔色を変えて山口をブロックに呼び、二枚態勢で待ち構える。
だが、日向は直前で方向を変えて逆サイドへと走り込んだ。
突然のことに木下達がざわつくが、俺は声も出ず只それを見つめていた。
速い。
そして、誰よりも小さい身体の彼が、誰よりも高く飛び上がる。
ブロッカーが必死に追うも、その手は間に合わない。
確かに放たれたスパイクは、誰にも触れられることなく相手コートに突き刺さった。
「―――嗚呼」
きっとこれが活路となる。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます!頑張ってください!! (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音々 | 作成日時:2016年8月14日 20時