手品２３ ページ24
地響きのような震えが身体を伝った。
朧げな意識が少しづつ鮮明になっていく。
足音。ボールの弾む音。高く響く元気な声と、威勢のいい雄叫び。
頭の上に何かが掛けられている。
顔を上げれば、辺りの光に少し目が眩んだ。ぱさりと落ちたのは黒い部活用ジャージだ。
「お。起きたか、奇田」
「……スガさん」
隣から声がして見てみると、同じように座ったスガさんが穏やかな笑顔でこちらを見ていた。
一体どれほど眠っていたのか。
時計が示すのは６時３０分。どうやら一時間近く寝入っていたらしい。
コート周辺には幾つものボールが転がり、凸凹コンビと田中が何か話をしている。
「すみません、大分寝てたみたいですね、俺」
「いいよいいよ。日向に聞いたけど、ずっと直上トスやってたんだって? よく続けたなあ」
「あの空気で落としたら負けな気がしたので」
「アハハ! 奇田は見かけによらず負けず嫌いだもんなぁ。疲れたべ、朝練まで休んでろ。俺のジャージ被ってていいし」
頭に掛けられていたのはスガさんのジャージだったのか。落としてしまって申し訳ない。
お言葉に甘えてもう暫く休ませてもらうことにした。
「にしてもよく寝てたな〜。結構騒がしかったと思うけど」
「俺もここまで熟睡したのは久しぶりでビックリです。普段は眠り浅いんで」
「大変だったんだぞー? 影山が日向にトス上げたと思ったら、それ打った日向がゲロっちゃって」
「マジすか。どうりで変な臭いするなと思いました」
「マジで!? 大地にバレるかな!?」
「うっすら臭う程度なんで換気すれば大丈夫だと思いますよ」
それはそうと……そうか、影山がトスを上げたのか。だから日向があんなに嬉しそうにしてる訳だ。
いつにも増して溌剌としている日向を影山は相変わらず鬱陶しそうに睨んでいるが、これまでのように見下しているような感じではないように思う。
俺としたことが少しばかり感慨深く思ってしまった。
ぼーっと眺めていると日向と目が合い、彼は顔を輝かせて駆け寄ってきた。
「クシダさん! ありがとうございました!」
「は?」
「先輩のおかげで影山からトスもらえました! 体育館も毎朝開けてもらったし!」
「えっ、いや、指導してたのはスガさんだし、体育館も俺の練習の為だから……」
「明日は絶対に勝ちます!」
「聞けよ」
「体育館開けてくれて、あざした」
「お前もか影山」
まったく、コイツ等は……。
「頑張れよ」
「「オス!!」」
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
