手品１８ ページ19
その後も問題なく練習が終わり、１年の二人は帰っていった。明日からは練習に参加するらしい。
それぞれに片付けを始め、俺は木下と共にモップを手に取ったが縁下達と雑談に興じていた。
スガさんとポールを運んで行った田中の悪態が後ろから聞こえてくる。
「なァ〜んか気に入らねぇんスよ、あの新１年」
「お前、初対面の奴大体気に入らないじゃん。アレだろ? そういう習性だろ」
「ぶはっ」
習性とはあまりに的確な表現で思わず噴き出してしまった。田中にじとりと睨まれた気がしたが、気にしない。
突然笑い出した俺に、周りの三人がぎょっとして目を向けてくる。
「悪い悪い! 田中が初対面の奴気に入らないのを、スガさんが習性って言ったのが言い得て妙だなと思って」
「 “習性” ! 確かに!」
「流石スガさん、上手いこと言うな」
「哺乳類霊長目タナ科ヤカラ属タナカリュウノスケ」
「ヤメロ、縁下!」
真顔で呟いた縁下の学術的分類が更に笑いをヒートアップさせた。頼むから俺の腹筋を痛めつけるのはやめてくれ。
暫く大笑いして一息ついた時、俺はふと去年のことを思い出した。
「そういえば俺も入部したての頃田中にガンつけられてたなぁ」
「あー、奇田ん時は長かったかもな」
「正直俺も初めは奇田のこと苦手だったな、なんか胡散臭くて。今もたまに思うけど」
「おまけにキザだしな。今もだけど」
「木下も縁下も辛辣だな。お前等そんなこと思ってたのか」
「実は俺も」
「お前もか成田!」
別に間違いではないし否定もしないけどさ。
１年の頃、特に入学したばかりの時の俺は誰に対しても “お客様” 用の態度で接していた。
顔には笑みを貼り付け、大仰な身振り手振りをしながら気取った物言いで話をしていた。手品師というよりも道化師のようだと、当時は思ったりもした。
こんな風に素の姿で居るようになったのはバレー部に入ってからのことで、今でこそ学校では気を抜いて過ごすことが多いが、初めは部活の時だけだった。
そういった意味でこの時間は俺の息抜きの時間になった訳だ。
ま、大抵の女の子には大好評だから今でも営業用だけどな。
「ていうか、奇田が田中に絡まれてたのは清水さんへの態度もあると思う」
「むしろそれが大半じゃね?」
「えっ、俺は清水さんの負担が大きいから気を配っただけだぞ? それに、美しい女性に言葉を尽くして賛辞を贈りたくなるのは当然だろ」
「ホントそういうとこだぞ、お前」
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
