手品１１ ページ12
追ってきてはないか……。よかった。
ふぅ、と軽く息を吐く。
女の子に絡まれるのは嬉しいけど、あの手の絡みを振り切るのは苦手だ。
悲しませてしまうのは本意ではないし、逆上されては堪ったもんじゃない。
ああして相手を照れさせて逃げるのはいつも使う常套手段だ。
けど、世の中ピュアな子だけじゃないし、スマートな断り文句でも考えなきゃなぁ。
っと、待て待て。本来の目的。
自分の教室へ戻りかけていた足を今度こそ１年３組へ向かわせる。
教室に辿り着き中を覗いてみると、机に上体を預けて豪快に寝入っているヤツを発見した。
おいおい口開いてんぞ、だらしない寝方だな。かっこいい顔してんのになんてアホ面だ。
熟睡してるところを悪いが、クラスの人に起こしてもらう。
出入りの邪魔になるといけないので廊下で待っていると、不満そうな寝起き顔で影山はやって来た。
「悪いな、寝てるとこ起こしちゃって。ちょっと聞きたいことがあってさ」
「……?」
眉間に皺を寄せたあからさまに怪訝な表情に苦笑いしつつ、直球に投げかけた。
「影山さ、俺のこと嫌い?」
「は? いや、そんなことないっスけど……」
「ホント? なんかさー、初めて会った時からすごい警戒されてる気がするんだよね」
「…………」
「え、図星? 俺そんな怖い?」
「い、いえ、怖くはないっス! けど……その……」
言葉に迷っているように唸る影山。
俺が何も言わず答えを待っていると、首を捻りながらも懸命に答えてくれる。
「なんか、雰囲気?とかが中学の時の先輩に似てて、それで、……なんとなく?です」
「その先輩、苦手だったのか?」
そう聞くと、またも渋い表情で考えながら「少し……?」と答えてくれた。
「そうかあ」と俺が頷くと、「けど」と彼は更に言葉を重ねる。
「今の先輩は、普通に話しやすいです」
……なんだ、ただのいい子か。
何故だか唐突にこの後輩が可愛く思えてきた。あんなに口悪いのに実は素直だからか。ギャップか。単純すぎやしないか、俺。
マイナスイメージが付きすぎたせいで、僅かなプラスが何倍にもなって俺の感性をくすぐる。
そうか、これが後輩を可愛がる気持ちか。いいな後輩、可愛いな後輩。
「影山……お前いい奴だな」
「……? あざス」
「うん、ありがとう。すっきりした。あ、ちゃんと自己紹介してなかったよな。俺、奇田男主。宜しくな」
「……影山飛雄っス」
決めた。後輩めいっぱい可愛がろう。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
