48話 ページ49
目が暗闇に慣れてきた。辺りの景色が見えてくる。
とりあえず僕は、目の前を見つめた。
「主殿……」
僕は一期様にじとりと睨まれていた。
笑いすぎたのかもしれない。
空気を断ち切るように和泉守様が口を開いた。
「なぁ、一期。安定に入り込んだ時間遡行軍を追い出す方法なんだが」
一期様は僕を睨むのをやめると、和泉守様に向き直った。
「……それでしたら、見当はついております」
「そうなんですか?」
「そうなのか?」
僕と和泉守様の言葉が重なる。思わず顔を見合わせてくすり、と笑う。
一期様が咳払いをして話を続けた。
「……この黒いもやを取り払う必要があるようですが」
一期様が僕に目線を向ける。つられて和泉守様とさっきから黙ったままの秋田様も僕を見つめた。
僕は、なんとなく一期様の意思を汲み取って口を開く。
「僕の力が必要、というわけですね」
一期様は頷くと、にこりと笑みを浮かべた。
「というわけで、黒いもやを追い払ってくだされ」
秋田様が空色の瞳を輝かせて、僕に激励の言葉を投げかける。
「主君、がんばってください!」
和泉守様が切れ長な瞳を細めて笑いかけてくる。
「がんばれよ、主」
僕は困ったな、と眉をひそめた。
「黒いもやを追い払う、ですか……」
僕は声に出してみて、改めて言葉の重みを感じていた。流れに流されてしまったが、僕には黒いもやを追い払うやり方は分からないのだ。
ちらり、と一期様たちの方を見てみる。
期待に染まった眼差しが突き刺さってきた。
一期様たちの期待を裏切りたくない。
なんとしても黒いもやを追い払わなければ。
僕はそんな思いに囚われて、黒いもやに手を伸ばした。
「……何も起こらない」
追い払うように手を左右に振ってみても、黒いもやは減らなかった。
やり方が違うらしい。
「どうすればいいんだろう……」
考えても分からなくなってきて、途方に暮れていると頭の中に声が響いた。
『僕を使って』
どこかで聞いたような声だった。いつ聞いたのだっけ。
「……和泉守様に背負われて、離れに向かったときに聞いた声だ」
ふとそう思い出して、言葉が口から出た。
同時に僕の懐から光が溢れ出る。
「これは……」
懐から光を放つものを取り出す。短刀だ。
柄から刃先まで雪を被ったみたいに真っ白だ。
いつの間に懐に入れていたのだろう。
『僕を使って黒いもやを斬るんだ』
僕の頭の中にまた声が響いた。
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時