26話 ページ27
「……ここに放り込まれた、とな」
三日月様は、僕の言葉を繰り返した。鋭い光が三日月様の瞳に宿っていた。
「それは、政府の仕業か」
三日月様が唸る獣の如く瞳を細めた。
その瞳は、目に焼き付くほど美しかった。
僕は一歩後ずさった。爛々と光る瞳が恐ろしかった。
「……三日月様?」
三日月様は、何も話そうとはしない。
僕が声をかけても微動だにしなかった。
三日月様は遠くを睨みつけていた。
瞳の中に僕は居ない。
一歩踏み出して、三日月様の袖を力いっぱい手前に引っ張った。
袖を引かれた勢いのまま、三日月様は前に倒れかけた。
けれど、倒れかけた瞬間に片足で踏ん張り、体制を整えた。
「一体、どうされたのですか」
僕は掴んでいた袖を放した。三日月様を見上げて質問をぶつける。
三日月様の瞳に僕が映る。
三日月様はそのまま動かない。混乱しているのだろう。
三日月様は呆然と僕を見つめていた。
瞳を開いては閉じる、を繰り返して目が覚めたように僕に告げた。
「……俺は政府を良いものと思っておらぬのだ」
「それは、何故ですか」
何故なのだろうか。三日月様は戸惑っているようだった。
視線は左右に動き、口の動きを見せないようになのか袖を口に当てていた。
「主さん!」
辺りを照らすような声に、気まずい沈黙は破られた。
思わず、僕は三日月様と顔を見合わせる。
障子は、音を立てて勢いよく開かれた。
傷ついた体に構わず、堀川様は笑顔を浮かべていた。
「兼さんの手入れをお願いします」
「大和守と国広の手入れもだろ……」
堀川様は、和泉守様を難なく背負いしっかりと立っていた。
背負われた和泉守様が、ふてくされたように小さく呟いた。
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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時