アイノウン_9 ページ9
ミロウside
ホテルのロビーにて。
「国のお偉いさんがわたしに何の用ですか〜?」
「おっと、私の役職をご存じなのですね。」
かたっくるしい人は嫌い。だって、話を湾曲させるのが得意なんだもん!
__彼のことは知っていた。魔法庁の大臣だ。わたしが知らないはずがない。
「護衛も付けずに随分気楽だね?」
「貴女も随分と砕けた口調で。」
いつの間にか言葉の応酬が始まっていた。
「こほん…貴女に、魔法兵法の指揮を執って欲しいのです。」
魔法兵法。端的に言うと、魔法を応用して行う隊列・作戦の作り方などの学問だ。
「教えるだけでいいの?」
「実を言うと…魔法軍の長も頼みたいところですね。」
顎に生えた長いひげをさすりながら、淡々とわたしに言う。
一方的で報酬すらも提示しないのは、当たり前に受けてくれると思っているからなのだろうか。
ロビーはもう深夜なのか、人はほとんどいなかった。
見張りか何かで受け付けの人が数人いるだけ。それが異様な雰囲気を生み出していた。
「ふぅん…申し訳ないけど、無理だなぁ。」
「何故ですか?魔法界ではかなり栄誉なことなのですよ!?」
「忙しい、ただそれだけだよ。別に権力なんていらない。旅の枷でしょ?」
きっぱりと断るも大臣は諦めきれないのか、やっと報酬や詳細を語りだした。
「城の特別な客間など、衣食住も徹底して完備しています!勤務時間もそれほど長くないですし…」
必死にわたしをとどめようと、身振り手振りで説明している。
__必要としてくれてる、それはとっても嬉しい。だけど…今は、今だけは無理なんだ。
ふと外を見やる。こんな夜に似つかわしくないほどの光が、こちらへと流れてきていた。
一抹の不安が体を駆け巡る。光の不自然さからか、はたまた別の感情からか。
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作者名:mofumegane | 作者ホームページ:youtube.com/channel/UC-31h_OvshlXRHaXmKewceQ
作成日時:2024年3月24日 23時