朱色の印 ページ9
「やだやだやだ助けて、助けてよ兄ちゃん! 待ってやめて、来ないで!」
「そ、そうだぞ。ドルーに少しでも触ってみろ、ぼくが蹴っ飛ばしてやるからな!」
暗く、じめじめとした灰色の地下室。その隅でキツネのベアマンの少年――ドルーは震え、ケントはそれをかばおうと、震える足を叱咤しながら立っていた。
つい数週間前まで、彼らは同じベアマンの仲間たちと、多少貧しくとも――それなりの幸せを享受しながら生活していた。二日ほど食事がとれない日はあれど、友人とバカをしたり身を寄せ合ったりしていれば耐えられた。
状況が急変したのは、ある時。今まで待っていれば一週間で帰ってきた兄貴分が帰ってこなくなったのだ。おかしい。これは、もしかしたら――そんな思考はすぐに止まった。なぜなら、やってきたからだ。
彼らにとっての恐怖の象徴、臙脂、そして深緑の制服を着た騎士たちが。
乱暴にひっ捕まえられて間もなく、彼らは、薄暗いステージの上に立たされた。そこでは大人たちが何やら数字を叫んでおり――後、一番大きい数字を言った者に引き渡されて、今に至る。
そんな、いまだ状況を把握しきれぬ彼らの対角線上にいるのは、こげ茶の髪に白髪が混ざり始めた初老の男。彼は社交界では美丈夫と話題の容姿を持つ侯爵だ。しかし現在、にたり、と嗜虐心たっぷりに笑うその様子からは美貌の片鱗も感じさせない。
皮手袋のはめられた彼の手に握られているのは、真っ赤に熱された鉄棒。棒の先には、何かマークのようなものが彫られた印がつけられている。煌々と鮮やかに、しかし不気味に輝いていた。
その棒は何に使われるのか。彼らには見当もつかなかったが――とにかく、身の危険だけは感じていた。
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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)
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