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ふん、と言い返すドルーを見て、成長したなあ、頼もしいなあ、とケントは感じるものの――やはり、状況についていけない。説明を求めようと少女の方へ視線をやると、それに気づいた彼女がぱちん、とウインクをする。そして、再び自分に注目を集めんと二、三度手をたたいた。
「ということで。ドルー君達が先に言っちゃったけど改めて説明しておくわね。私たちは、自由になるためにこの屋敷から脱走をしたい。最終的な目標はこれよ。そのために今まで情報収集だとか頑張って来たし、みんなそれぞれベアマンとしての能力を生かせるようになったわ。――でもね」
一度言葉を切って、彼女は悔しそうにこぶしを握り締める。
「勝てないの。いくらベアマンで身体能力が高いからと言って、私たちはまだ子供。それに、この中でも経験のある子はいるでしょう? 屋敷からの脱走に成功しても、その後生活方法を見つけなきゃ、騎士たちに見つかって逆戻りするだけ。だから私たちは逃げるにも、その後生きていくにも、誰かの手を借りなきゃいけない」
夕焼けの瞳が、ぐらぐらと危うげに揺れる。揺れる声から、いかに状況が絶望的かは察せた。ごくり、と皆が生唾を飲んだその瞬間。「はーい!」とドルーの横でピッと手が伸びた。
「ていこうそしき、でしょ? あたし調べたよ。なんか、困ってるベアマンの人を助けてくれる、いいひとばかりが集まってるんだって!」
正解、と少女は目を細めて笑う。今度は柔らかく。目まぐるしく変わる彼女の空気感に、ケントは眩暈を起こしそうであった。
眩暈の原因はそれだけではない。これから始まることの概要は分かったが、まだ謎なのは「実行役」という自分に与えられた役割である。
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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)
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