ハロー、ハロー、届きますか？

日記:37日目 ページ44

私の手のひらには少し汚れたネコのストラップが。それは自分でつくったただのガラクタなのに、夜久さんが持っていてくれたという事実でとんでもなく愛しくなる。





　夜久「あー…。本当ならここで言うつもりはなかった。絶対にフりたかった。おまえのせいだぞ」


　『……うっ、夜久さん…卒業しないでくだざい』


　夜久「だから先輩に留年を勧めるなっつの」





2人の間に心地の良い春の風が吹き抜けた。
すっかり暖かくなって。
桜のつぼみも膨らみはじめたこの頃。
春って聞こえが良いけど実はとっても切なかったりする。

未だ涙が止まらない私に夜久さんは少し困ったように笑った。




　夜久「返しに来なくても良いからな、俺なんかより良い人見つけて…」


　『やだ！！！』



夜久さんがありえないことを言うものだから勢い余って少し大声を出してしまった。当の本人は面食らったように固まってしまった。情緒不安定か、私め。

でも、私は



　『…夜久さんじゃなきゃ、…嫌です…！』



彼に対してキッと睨みをきかした。
「あ〜！もう！！」と今度は夜久さんが大声を出すものだからびっくりした。頭を乱暴にかいたあと赤くなった顔で。



　夜久「俺も。Aじゃなきゃ嫌だよ」




ならば。
私のすることはただ1つ。



　『…待ってますから』




半ば自分に言い聞かせるように放った言葉は思いの外小さかった。春の息吹にのせられて、晴天の空に誓う。まごうことなき、純恋。愛とよぶにはまだ幼い気持ち。


太陽に負けないくらいの輝きを放ち、

夜久さんはまた笑った。



















そうして、大好きな先輩は今日をもってこの音駒高校を卒業した。

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