一歩後ろの距離

幸せの定位置 ページ15

あの一件から谷崎兄妹はAに対してとても過保護になった。
少し出かけるというだけで付き添うと申し出たり。
少しでもAの帰りが遅い日は二人そろって探偵社をうろうろと歩き回り
Aが帰ってくるとナオミは勢い良く抱き着く。
そんな光景が半ば当たり前のようになっているほどだ。
Aが擦り傷なんて作って来た日にはもう大変なことになる、
谷崎は慌て「与謝野先生！！」と叫びながらAを抱き上げ、
ナオミはまるで手術を待つ家族のように医務室の周りで待機していた。
これには探偵社員たちもAも呆れていた。
そして何より変わったのは3人の距離だ。
まずはナオミとAの関係。
今までAの事を谷崎の彼女としてあまりよく思って居なかったナオミも捨て身で自分や兄の事を助けたAの事を認め、今ではお姉様と呼び本当の姉妹の様に接していた。
そしてもう一つは当たり前になっていた三人の配置だ。
今まで一歩後ろを歩いていた帰り道は今はAを真ん中に右手をナオミに左手を谷崎に握られ、
三人並んで帰っている。
今まで一歩後ろを歩いていた少女は今は両手に大切な人達の体温を感じ
寂しさなんて一抹も感じることなく歩いている。
これがこの三人の新しい距離。
新しい定位置だ。

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