星月夜 3

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「髪乾かした？」
「ざっとは」
「ざっとじゃなくてちゃんと乾かさなきゃ風邪引くだろ。今の北山は抵抗力弱そうだし」
「別に抵抗りょ」
「つべこべ言わずに髪乾かしてきて」


俺の話は聞いてもらえないようだから、仕方なく脱衣所に戻りドライヤーでしっかり髪を乾かす。

乾かしている間に寝ててくれないかなんてこの期に及んで思ってしまうが当然そんな訳もなく、リビングに戻った俺を藤ヶ谷は待ち構えていた。


「北山、寝るよ」
「え？」


てっきり何か答えにくいことを言われるのかと思っていたが、寝ると言われて首を傾げる。


「そんなに疲れてるんだったら、ベッドで寝かさないとと思って」
「いや、でも藤ヶ谷が」
「そう言うと思ったから風呂上がるまで待ってた。一緒に寝るよ」
「え、一緒に？ 藤ヶ谷と？」
「他に誰がいんの。ほら、明日もあるしさっさと来て」
「いや、無理だろ」
「北山が一緒に寝ないなら、俺がソファで寝る」
「それは駄目」
「だったら早く」


一緒に寝るなんてあり得ないが、藤ヶ谷をソファで寝かせることの方があり得ない。

こうなったら藤ヶ谷が折れないのは分かっているし、言い合いを続けても睡眠時間を減らすだけだと仕方なく頷いた。


「……分かった」


セミダブルだからそこまで狭いということはないが、男二人で余裕がある程ではない。


藤ヶ谷は細いから端に寄れば……と考えながら、寝室に向かい「お邪魔します」とベッドの中に入った。

北山のベッドじゃんと笑いながら布団に入った藤ヶ谷の気配を近くで感じ、端に端に寄ってしまう。


「そんな端に行ったら落ちちゃうだろ」
「お、おう」


少し中に寄って、益々顔を見られなくて背中を向けた。


「おやすみ」
「おやすみ」


そんな俺を気にするふうでもなく出た挨拶に、何でもないように答える。


藤ヶ谷の呼吸をすぐ近くに感じる。

匂いや温度も布団越しに感じて、緊張するのに安心する。


一緒に寝るなんてあり得ないと思っていたのに、甘い匂いに誘われて重たくなる瞼に少しだけ幸せを感じていた。

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