星月夜 3

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次の日は一日で二公演あったが公演と公演の間も別室を用意してもらって血を飲ませてくれたし、付きっ切りで体が思うように動かない俺をサポートしてくれた。

玉森がメンバーやスタッフにどう言っているのかは知らないが、誰も何も言って来ない。
気にするような視線は時折感じるが、それすら見てはいけないような雰囲気で視線を送られるだけ。


藤ヶ谷だけは何か言いたそうに見てきたが、玉森がずっと近くにいるから話を聞くことも出来ない。


どうにかしなきゃと思いながら誰に何をどう言えばいいのかも分からず、コンサートをやりきるだけで精一杯で一日が終わった。


何とも言えない雰囲気のまま楽屋を出ようとすると宮田が「お大事にね」と笑顔で声を掛けてきて、それだけで心が温かくなってありがとなと答えた。


「ミツ、早く行くよ」
「あ、うん。じゃあ、お疲れ」


玉森の声に言うと、宮田は笑顔で手を振ってくれた。


扉が閉まる前、無意識に藤ヶ谷を探すとやはりこちらを見ていた。

不機嫌そうな悲しそうな複雑な顔。


声を掛けることも出来なければ、掛ける言葉も体力も気力も今の俺にはない。


重たい足取りの隣を、玉森は機嫌良さそうに歩いている。


どんな気持ちでいるのかなんて俺が聞くことではないし、感謝の気持ちは変わらない。

だがやはり何とも言えない気持ち悪さがあって、心がざわざわする。



「明日は薬飲むから、血吸わせてもらわなくて大丈夫」


布団に入ったタイミングで言った。


「一口もいらないの？」


薬を飲んだ俺を見たことがない玉森は当然、心配するだろう。


「全然大丈夫。本当に普通の人と何にも変わんなくなるから、コンサートだって楽勝だぜ」
「でも強い薬なんでしょ？」
「まあな。でも明後日は午後からだから」


前回使った時、起き上がれないくらい体が怠かったがおそらくラジオなら何とかなるだろう。

そう思いながら布団に潜り込むと急激に眠気が襲ってきて、瞼がどんどん重たくなってくる。


「明後日、違う仕事じゃん」
「うん、だから朝いっぱい飲ませてもらうかも」
「それはいいけど」


玉森はまだ何か言っていたが、眠すぎて目が開けていられない。


「……やすみ」


そう言った唇に何か触れた気がしたが、その感触も眠りに溶けていった。

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