星月夜 3

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玉森と宮田がスタジオに向かい、メンバーの間に何とも言えない空気が漂う。

答えを求められているような雰囲気に耐えられず、飲み物買ってくると楽屋を出た。

出たはいいが今の俺が行ける場所なんてなくて、仕方なく言葉通り自動販売機に向かい近くの椅子に腰を下ろしたところで後ろから声が掛かる。


「北山」


見ると難しい顔をした藤ヶ谷が立っていて、同じように空気に耐えられなかったのかなと思うとこんな時だが少し笑えた。


「たま、どうしたんだろうな」


何も触れないのもそれはそれでどうかと思い、笑った流れで口にした。


「さっきのはさすがにちょっと驚いたけど、最近のたまは俺に対してあんな感じだよ」


隣に座った藤ヶ谷の言葉に驚き、見つめた。


「え、そうなの？」
「直接なにかされたり言われたりするわけじゃないけど、牽制されてる感じ」
「気のせいじゃなく？」
「気のせいくらいでこんなこと言ったりしない」
「……だよな、悪い」


苛々した雰囲気を感じて謝った。俺はすぐ藤ヶ谷の機嫌を悪くさせてしまう。


「いや、俺もごめん」


最近、俺が機嫌を悪くさせても謝るようになった。

藤ヶ谷の中でどんな変化があったのか分からないが、それが嬉しくて怖い。


「こんなところにいて平気なの？ 匂いすごいけど」
「空いてる部屋に入ろうかとも考えたけど、押し入られたらそっちの方がマズイと思って」


藤ヶ谷はああ、と低い声で呟いてから少し考えるように口元に手をあて俺に視線を戻した。


「今度から北山が楽屋出たら一緒に出るわ」
「や、そんなわざわざいいよ」
「誰かいないと危ないじゃん」
「そうかもしれないけど」
「たまがいない時でいいから」


なんでそこまでしてくれんの？ て、思っても聞けない。
どんな答えが返ってきても、俺は何にも言えないから。


「……ありがとう」


それだけ言うと、藤ヶ谷は少し照れ臭そうに別にとぶっきらぼうに下を向いた。


その表情が可愛くて、胸がきゅっと鳴る。

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