誤解 ページ37
「お、及川さん、なんで」
「Aちゃん足速いね。流石の及川さんも疲れちゃった」
と、及川さんがへなへなとしゃがみ込んで小さく笑った。
私も乱れた呼吸を整えるように酸素を貪る。
「帰るって、家の方向逆だよね？」
嘘が下手だね、と立ち上がった及川さんがポンと私の頭に手を乗せて「送るよ」と一言落とした。
「それに、Aちゃんに話したいこともあるし」
「話…？」
私は若干の警戒心を抱きながら、及川さんの後ろについて来た道へと足を向けた。
＊
「俺、Aちゃんの誤解解きたくてさ」
外灯に照らされた道を歩きながら及川さんが静かに口を開いた。
「誤解？」
「そう、金田一から聞いたよ。Aちゃんが、国見ちゃんと××が付き合ってるって勘違いしてるって」
その名前を耳にした瞬間、顔が緊張で強張って青ざめる。
「それは、もう国見に聞きました。付き合ってないって」
「うん。でも、もう一つ誤解してるんだよね」
及川さんがいつになく真剣な声色で淡々と言葉を並べるものだから、歩きながらも思わず身構えてしまう。
「それよりさ、Aちゃん。なんでそんな俺と距離取ってるの？」
私の三歩先を及川さんが歩きながら振り返る。
「な、なんとなく…です」
だめだ、及川さんの隣を歩くのは。
どうしても、あの先輩の香りが染みついて離れない及川さんの隣を歩くことに抵抗があった。
「手紙の差出人」
及川さんのその言葉に、神経が委縮して、足に根が生えたようにその場に立ち止まった。
それは、ラブレターの存在を知っているのだと認めたようなものだ。
「その反応、国見ちゃん、何も話してないんだね」
「…」
その沈黙は肯定を意味する。
「あれ、実は俺なんだよね」
「…はい？」
耳を疑った。
及川さん今なんて？
ラブレターの差出人は自分だと、そう言った？
「えっと…誰宛の手紙のことを？」
「国見ちゃん」
「…」
「いや待ってAちゃん！そんな蔑んだ目で俺のこと見ないで！そもそもが誤解なんだって！」
慌てた様子で必死に否定する及川さんに、私は目を細めた。
私の反応に及川さんは落胆したように肩を落とした。
「だから、その誤解を解きたくて」
軽い疑いの雲が垣間見える中、私はぎこちなく笑った。
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小鈴(プロフ) - 楓鈴さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです！パスワードはメッセージにてお送りさせていただきますのでご確認ください！ (2022年8月18日 15時) (
レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
楓鈴(プロフ) - 小鈴様の作品どれも面白くて一気読みしてしまいました(笑)素敵なお話、ありがとうございます。その…恋愛保護方針論の小説を読みたいです…！パスワードを教えて下さいませんか。コメント失礼しました。 (2022年8月6日 0時) (レス) id: 20d25d3656 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 夕月さん» コメントありがとうございます！古い作品の中からわざわざ読んでいただき嬉しい限りです！パスワードはメッセージにて送らせていただきます！ (2022年7月23日 0時) (レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - こちらの作品や小鈴様の他の作品を拝見して今更ながらファンになりました。2年以上前の作品にはなりますが、「恋愛保護方針論【HQ】」も拝読したく、パスワードをお教えいただけないでしょうか。このメッセージに気付いてもらえますように。 (2022年7月21日 11時) (レス) id: 2778bc399a (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 月花さん» コメントありがとうございます！お返事遅くなってしまったので、まだ見られているかわかりませんが、パスワードをメッセージで送らせていただきますね！ (2021年11月4日 19時) (レス) id: 3ef1db8aa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年12月3日 22時
