救世主 ページ34
はいはいわかりました。いいですよ。これは私が運びますから。
腕を引いても頑なに重い方を持とうとしない国見を諦め、段ボールに手をかけた時────
「これどこに持ってくって？」
声とともに段ボールが攫われた。
頭上から降ってきた声に振り返ると、そこには軽々しく段ボールを持ちあげる金田一の姿。
「えと、教室」
「なんだよ。また喧嘩でもしたのか？」
「や、違うけど」
「ならいいけど」
と、段ボールを抱えた金田一が国見を追いかけさっさと歩いていく。
「国見、あんまAのこといじめるなよ」
「お前は甘やかしすぎ」
そんな二人の会話を追いかけ首を垂れながら歩いていると「ラッキーだね」と私の気も知らず隣で友達が笑っていた。
＊
「国見は？」
今日は分が悪いことに月曜日。
ＨＲが終わると同時に金田一のクラスへと滑り込んだ私に、彼が問う。
「わっかんない」
「昼休みのこと根に持ってんのか？」
「…違、わないけど」
お昼休みのこととは、先程の段ボールの一件のことだ。
国見のことになるとどうしてもムキになってしまう自分にも腹が立つ。
「国見のこと置いていくわけにもいかねえだろ」
「わかってるけどさ」
行くぞ、と鞄を引っ張られ国見のもとへと引きずられる私はさながら愚図る子供だ。
そうして金田一を挟んでいつものように３人で帰路に就く、が私と国見の間に会話はない。
見兼ねた金田一が話題を提供するが、私も国見も会話を続ける気がなく流すような相槌ですぐに会話が途切れる始末だ。
流石の金田一も饒舌に振舞いながらも困り果てていたようで、家路の分かれ道が来たところで緊張感から解放されたように軽やかなステップを踏んで私たちと別れた。
「…」
「…」
金田一と別れた後の私と国見の間に、会話はない。
「寒いの」
いつもならべらべらと一人で喋り倒すのに今日に限り無口な私を不思議に思ったのか、国見が口を開く。
国見がそう聞いたのは、私がブレザーのポケットに手を突っ込んで身を縮込めながら歩いているからだろうか。
「今日さ、」
閉ざしていた口を開いて目先にあった小石をローファーで軽く蹴飛ばすと、地面に跳ねて転がった。
「…」
「…」
「…なに？」
「…ううん、なんでもない」
脳の中に波がざっと押し寄せる感覚。できればこのまま流され溺れてしまいたい。
別に、普段と何ら変わらない日常なのに。
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小鈴(プロフ) - 楓鈴さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです！パスワードはメッセージにてお送りさせていただきますのでご確認ください！ (2022年8月18日 15時) (
レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
楓鈴(プロフ) - 小鈴様の作品どれも面白くて一気読みしてしまいました(笑)素敵なお話、ありがとうございます。その…恋愛保護方針論の小説を読みたいです…！パスワードを教えて下さいませんか。コメント失礼しました。 (2022年8月6日 0時) (レス) id: 20d25d3656 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 夕月さん» コメントありがとうございます！古い作品の中からわざわざ読んでいただき嬉しい限りです！パスワードはメッセージにて送らせていただきます！ (2022年7月23日 0時) (レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - こちらの作品や小鈴様の他の作品を拝見して今更ながらファンになりました。2年以上前の作品にはなりますが、「恋愛保護方針論【HQ】」も拝読したく、パスワードをお教えいただけないでしょうか。このメッセージに気付いてもらえますように。 (2022年7月21日 11時) (レス) id: 2778bc399a (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 月花さん» コメントありがとうございます！お返事遅くなってしまったので、まだ見られているかわかりませんが、パスワードをメッセージで送らせていただきますね！ (2021年11月4日 19時) (レス) id: 3ef1db8aa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年12月3日 22時
