私と国見と金田一 ページ21
さっきの及川さんとの会話を国見に聞かれていたのではないかとひやひやしながら、二人に背を向け改めて帰路につく。
いや、別に今更気にすることでもないのかもしれないが。
「持つ」
軽くなった右手は、金田一によるものだった。
「半分持つ」
申し訳なさもあり、金田一にそう申し出るが、私の背が低いから逆に持ちづらいとのことでぴしゃりと返された。
１６０センチはある私の背が低いというよりかは、金田一の背が高すぎるのだが。
「…ありがとう」
及川さんの時と違って素直にそう言えるのは、彼は私にとっての友達という位置づけだからだろうか。
私と金田一が並んで歩く後ろにいる国見を振り返ると、こちらには興味なさげに歩いているようだった。
「国見、何であんな嘘ついたんだよ」
「嘘…？」
金田一が後ろを歩く振り返りながら言ったその言葉に、私は大袈裟に反応した。
「嘘じゃないって」
「でももう岩泉さん帰ってたろ」
「岩泉さんが及川さんを探してたのは本当の話」
全然、話が見えない。
じゃあ及川さんはいるはずのない岩泉さんのところに行ったってこと…？
「国見…？」
「ん」
私が足を止めると、後ろを歩いていた国見も足を止め、そして金田一も数歩先で足を止めた。
「嫉妬…？」
「は？なんで」
「私が、及川さんと一緒にいたから」
私の自尊心の塊化のような発言に、国見はやや冷ややかな意地の悪い笑みを口元に浮かべて私を見降ろした。
「それ、自惚れっていうんじゃないの」
せせら笑った国見にぐっと押し黙ると、背後から金田一の小さなため息が聞こえた。
そうだよね。国見が私なんかに嫉妬するわけがない。
いつまでも思わせぶりな国見の行動に、私は振り回されてばかりだ。
「お前、頑張るな」
歩を前へと進めだした私に、金田一が小さく言った。
「うるさい」
その私の言葉は、金田一と国見の両者に向けたものだ。
ほんの少しでも、国見が私に興味を持ってくれて、あわよくば友達以上の気持ちを持ってくれるのであれば嬉しいなって、ただそれだけで。
いない岩泉さんの元へと走った及川さんを呼び止めようとした私の腕を、国見がいつもの無表情で掴んで引き止めたのは、また別の話なんだろうけど。
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小鈴(プロフ) - 楓鈴さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです！パスワードはメッセージにてお送りさせていただきますのでご確認ください！ (2022年8月18日 15時) (
レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
楓鈴(プロフ) - 小鈴様の作品どれも面白くて一気読みしてしまいました(笑)素敵なお話、ありがとうございます。その…恋愛保護方針論の小説を読みたいです…！パスワードを教えて下さいませんか。コメント失礼しました。 (2022年8月6日 0時) (レス) id: 20d25d3656 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 夕月さん» コメントありがとうございます！古い作品の中からわざわざ読んでいただき嬉しい限りです！パスワードはメッセージにて送らせていただきます！ (2022年7月23日 0時) (レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - こちらの作品や小鈴様の他の作品を拝見して今更ながらファンになりました。2年以上前の作品にはなりますが、「恋愛保護方針論【HQ】」も拝読したく、パスワードをお教えいただけないでしょうか。このメッセージに気付いてもらえますように。 (2022年7月21日 11時) (レス) id: 2778bc399a (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 月花さん» コメントありがとうございます！お返事遅くなってしまったので、まだ見られているかわかりませんが、パスワードをメッセージで送らせていただきますね！ (2021年11月4日 19時) (レス) id: 3ef1db8aa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年12月3日 22時
