心情証明 ページ42
「ていうか、まっつんのことも頼っちゃってさ」
身に覚えがある感覚。
私が内心岩泉を邪魔だと思っていたように、もしかしたら及川も―――
「及川…もしかして、ヤキモチ…？」
私の思いがけない問いに、及川が表情を固めて目をぱちくりとさせたのも数秒。だんだんと戸惑いの色を顔に浮かばせた。
「あーもう！」
「わっ」
及川が私の腕を自身の方へと勢いよく引いて、そのまま倒れこんだ私の身体を包み込んだ。
視界が揺れて、何が起こったのか理解するまでに秒針がカチ、と動くまでもかからない。
及川が力強く抱きしめるものだから、私たちの間には空気が入り込む隙間すらない。
「及川…？」
「ずるいよA。俺の気持ちも知らないで」
どの口がそれを言うか。二度も玉砕している相手に抱きしめられるこっちの気持ちにもなってほしい。
心臓が爆発しそうだ。
この間とはまた違う展開に、私はそっと及川の胸に頬を寄せた。心臓の上に耳を当てると、少しだけ早い心音が聞こえた。
「及川、緊張してるの…？」
「うるさい、ちょっと黙って」
身体を伝って少し籠って聞こえる及川の声。
この状況にドキドキしているのは私だけじゃないのだと、自惚れたくもなる。
「マッキーに、告白されてたよね」
「な、なんでそれ…！」
突然の言葉に、私は及川の胸から頬を離して顔を上げるも、後頭部に手を差し込まれ、再び及川の胸の中へと強制的に戻される。
まさかあの日の放課後の教室での出来事を、誰かに見られていたなんて。しかも一番見られたくない及川に限って。
顔が、発火しそうなくらいに熱い。
「盗み聞き、犯罪」
「そんな刑法があるなら世の中の人はみーんな犯罪者だね」
知的な皮肉を含んだ、抑制された笑いを落とした及川に背中に、私はそっと腕を回す。
「私が好きなのは、及川だけだよ」
もう知ってると思うけど、と付け足す。
この間、最後まで腕を回すことのなかった及川の背に触れる。がっちりとした体は、いかにバレーに打ち込んでいるかを物語る。
「へ、へえ。そう、なんだ」
やけにぎこちなく言葉を紡ぐ及川は、今どんな顔をしているのだろうか。
少しでも顔を赤らめて、私に揺らいでくれていたのならどんなに嬉しいことか。
ちょっとでも私に好意を抱いてくれていたのなら、一人の女の子として見てくれていたのなら、どんなに嬉しいことか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 683人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!１日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (
レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした！ (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです！一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです！ (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした！マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました！ (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ？は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小鈴
| 作成日時：2019年10月17日 21時
