逆鱗 ページ29
ここ暫く、私は朝教室に向かう時は今まで使っていた中央棟の階段ではなく、人通りの少ない西棟の階段から教室へ行くことが多くなった。
陰口はなんてことなかったが、お弁当をぶちまけた時のような直接的な危害を避けての行動だった。
そしてそれは、及川に二度目の玉砕をして一か月ほど経った日のこと。三年の階についたところで、私は足を止めた。
「あのぶりっ子女、まだ及川くんに付き纏ってるわけ？」
「そう。先月あの女がいつも作ってる及川くんのお弁当を△△たちがわざとぶつかって落としたらしいけど、全く効果なし」
「あ、そうなの？へえ、いつもと変わらない涼しい顔してるから、そんなことあったなんてアタシ知らなかった」
「流石ぶりっ子女。伊達に三年もぶりっ子やってないわ、図太」
「さっさと彼女面すんのやめろっての」
前までの私なら、そんなの気にせず通り過ぎているのだろうけど、お弁当のことが頭をよぎって、直接的危害を見越し、踵を返そうとしたときだった。
「それにしても及川くん」
ふと、何か企むような含みのある声が耳に届き、階段を降りようとした足をぴたりと止めた。
「最近、付き合い悪くない？」
「あー、わかる。そのことでいけばこの間◇◇のお弁当受け取らなかったらしいよ」
「ちなみに２組の〇〇さんが家庭科で作ったクッキー断ってるのも見た」
「えー、なんで。〇〇さんのって、前は喜んで受け取ってなかったっけ」
「てかなにそれ。ぶりっ子女のお弁当は相変わらず続いてるのに他のは拒否って。いいご身分」
そんな会話に耳を立て、私は息を潜めた。
及川が私以外の女子からのお弁当を受け取っていない…？
前までは人当たりのいい対応していたのに、全部断っているってこと…？
「及川くんもあのぶりっ子女と一緒で、紳士の皮を被った誑かし野郎だったりして」
「ちょっとそんな言い方しないでよ」
「もしかして及川くん、あの女とデキてたりするかもよ？」
「えっ、付き合ってるってこと？」
「違う違う！」
―――――「＿＿＿って、こと」
その言葉の強烈な一撃に、一瞬にして怒りが込み上げて心臓が音を立てた。
私にではなく、及川に対する下品な罵倒が胸に刺さった。
私は耐えきれない怒りに足を踏み、彼女たちの視界に自ら入った。
それは行き場のない怒りに我慢できず、理屈で納得するよりも感情に任せた行動だった。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!１日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (
レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした！ (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです！一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです！ (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした！マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました！ (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ？は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年10月17日 21時
