痛感と和解 ページ21
「責任、とれないよ」
床の掃除まで手伝ってもらった岩泉と、階段に並んで腰を下ろしていた。
「俺はンなヤワじゃねえから安心しろ」
そういう問題じゃない。普通床に落ちたもの食べる？３秒ルール程度ならわからなくもないけど。
やっぱり、私には岩泉という人間がわからない。
お礼を言わなきゃならないのに。私のこと、嫌いなくせに、なんでって、そう思ってしまう。
「岩泉って、私のこと嫌いなんでしょ」
「またその話かよ」
しつこい、と言わんばかりに岩泉は膝に腕を伸ばして頭をガクッと落とした。
「つうかお前、そっちの弁当渡して来いよ」
岩泉が指したのは、運よく無事だった自分のお弁当箱。
「これはダメなの！卵焼きの切れ端とか、ちょっと焦げちゃったウィンナーとか入ってるから、及川には食べさせられない！絶対に」
そうだ、及川…どうしよう。やっぱり購買で買うしかない、かな。
「いいから行って来いよ。アイツ腹空かせて待ってんじゃねえの」
あぁ、嫌だ。
なんで及川の一番が岩泉なのか。嫌でもわかってしまう。
「岩泉って、よくわかんない」
「あぁ？俺はお前の方がよっぽどわかんねえよ」
「どこが？私わかりやすいってよく言われるけど」
「…ちげえよ。そうことじゃねえ」
岩泉の弱々しい言葉を深く考えずに、私は首を傾げて口を開く。
「岩泉が私のこと嫌いでも、私は岩泉のこと嫌いになれないよ」
どんなときでも、私の味方になってくれたのは及川だ。
でもその及川がいないときに、助けてくれるのは、いつも決まって岩泉だった。
私のことが嫌いなくせに。言動が矛盾だらけ。
「この間、家まで送ってくれてありがとう」
私の言葉に、岩泉は頭をガシガシ掻いては勢いよく立ち上がった。
「お前って、馬鹿だな」
岩泉の悪意を含むその言葉に、私は眉を顰める。
「ほんと、馬鹿」
くっくと肩を揺らして私を見下ろした岩泉に、私の頭の中にはハテナが浮かぶ。
「岩泉、笑った」
「あぁ？俺が笑ったらおかしいのかよ？」
私が独り言とも捉えられる小さい声で呟くと、それを聞き逃さなかった岩泉の淡々とした声が耳に届く。
「や、そうじゃなくて」
今日の岩泉、変だ。
「ねえ、本当に岩泉？」
「他に誰がいんだよ」
私の疑問に考える間もなく切り返す岩泉の表情は、心なしか和らいで見える。
いつものしかめっ面じゃ、ない。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!１日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (
レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした！ (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです！一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです！ (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした！マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました！ (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ？は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年10月17日 21時
