質問欲に駆られて ページ13
「…」
「…」
私は岩泉の後ろを小さい歩幅で歩いていた。
でも一定の距離を保っているのは、岩泉が時折ちらりと私を見て確認してくれているからだ。
普段私に対して冷たいくせに、ふとしたそういう優しさが、本当に癇に障る。
どちらとも、口は開かない。会話が、ない。
長年一緒にいるはずなのに、二人きりになるのは久しぶり。中学ぶりだ。
いつもは及川が私たちの間にいて橋渡しをしていたから困ることはなかったけど、いざとなると何を話していいのかわからない。
高校に入学してからというもの、私たちの関係は明らかに悪化している。
私が何か変わったというよりも、岩泉の私に対する態度が変わったから。
でも、岩泉と二人きりになることなんてそうそうあるものじゃない。
だからこそ、岩泉にはちゃんと聞いておきたいことがある。
今を使わない手は、ない。
「岩泉」
「なんだよ」
足を止めることなく、私を振り返ることもなく返事をした岩泉の背中を見る。
普通に話しかけても無視されるかと思っていたから、安堵の息が漏れた。
いつもは及川と一緒にいるから気づかなかったけれど、岩泉も背、伸びたな。
私の中の岩泉が中学の頃で止まっている。高校に入ってからはまともに話していなかったから。
「岩泉って、私のこと嫌いでしょ」
「なんだよいきなり」
私が一番気になっていたことを思い切って聞いてみる。
岩泉とこうしてちゃんと話すのは久しぶりで、安堵と同時に若干の緊張も走る。
「嫌い、でしょ」
本人に直接言うのを躊躇しているのか、はぐらかす岩泉に催促を掛けるよう、再度同じ問いを投げかける。
これは返事をしてしまった岩泉にも落ち度はあるし、彼の性格上答えないわけにはいかないはずだ。
「…さぁな」
こうしてあしらうのは、岩泉なりの巧妙な逃げ。
「ちゃんと、答えてよ」
「なんで、そう思うんだよ」
私が足を止めると、気づいた岩泉も進行方向を向いたまま足を止めた。
「だって、そう感じるんだもん」
我ながら子供じみた言い方だ。
すると、雑に頭をガシガシ掻いた岩泉がちらりと私を見た。
月に照らされたその横顔が、どことなく寂しげに見えたのは気のせいだろうか。
「まぁ、アイツのことで騒いだり群がる女は総じて嫌いだな」
アイツっていうのは、及川のこと。
私は彼のその言葉に、目を細めた。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!１日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (
レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした！ (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです！一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです！ (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした！マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました！ (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ？は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年10月17日 21時
