ページ ページ28
ようやく決心をつけた坂田くんを送り出してから数分後。
窓から校庭側を眺める。
やっぱり三階からだと見やすいな。
「お、いるいる」
ちょうど陸上部の部活が終わったのだろう。帰る直前の遥に、坂田くんが走り寄って声をかけるのが見える。
なにを話しているのかまではさすがにわからないが、直前になって坂田くんが日和ったりしなければ告白しているのだろう。
窓を開けて、身を乗り出して覗き込むと、二人とも真剣な表情をしているのがなんとか見えた。
……あ、なんか二人とも照れてる。これは告白成功とみて問題ないかな？
「やっぱ、両想い同士でカップルになるのが一番だもんねー」
実をいうと二人が両思いであることを知っていた私はくすっと笑う。
恋のキューピット役もなかなか大変だ。
「お、歩いてる」
二人で寄り添って歩き始める姿は、本当に幸せそうで。
その姿を写真に収めたくてカメラを手に取った。
「……あ、れ？」
せっかくシャッターを切ったのに、なぜか写真がブレブレだ。
もう一度やり直しても。
さらにもう一度。何度やってもうまくいかない。
「なんで、だろ」
二人の幸せそうな姿を写真に収めるのは諦めて、レンズを東の方へ向ける。
藍色に染まり始めた空から、まんまるいお月様が顔を出していた。
そっか。今日は満月なんだっけ。
満月に向けてシャッターを切ると、今度はブレずにしっかりと取れた。
白に近い色をした月は、写真のなかでも光り輝いている。
「今日は、お月様がきれいだなぁ」
＿＿＿月が綺麗ですね。
それはきっと、私がもう言えない言葉。
セーラー服のポケットをそっと撫でた。
・
「 A！ 私、坂田くんと付き合えることになったの！ 」
「 ほんと！？ よかったじゃん！ やっぱ、両想い同士でカップルになるのが一番だもんね！ 」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
