malus＿1 (ページ2)

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ｶﾗﾝっと軽い音がした気がした

熟睡してしまったらしい
薄ら目を開けてみると、目の前の光景に驚愕した

｢おはよう｣

『………ど、どちら様』

私の質問に目の前の人は困ったように笑った

困っているのは私の方だ

寝る前と同じ神殿だ

振り返れば鏡やらよく分からない貴金属の物が並べられている

ここは紛れもない神社の本殿内。

そして視線を戻すとやっぱり困った顔で笑っているこの男

｢ここにいるモノは決まっているでしょ｣

『神様……』

この世のものとは思えない端正な顔立ち
曇りひとつない真っ白な髪の毛
見たこともない高そうな装い
鈴の音のような高い声

どこまでも人間に近い形をしているのに、どこか違う

｢ここには来るなって言ったのに｣

『私だって……』

別に来たくて来た訳じゃない
そもそもこんな所来たくもない

貧乏だけどお母さんと普通な暮らしをしたかっただけなのに…

『あなたのせいだからね。
雨が全然降らなくて、そのせいで私は……』

｢知ってる｣

『そりゃ神様だもの。知ってて当然よ
毎日毎日いっぱいお願いして、いっぱいお賽銭もお供え物もしたのに』

でも雨は降らなかった
どんどん田んぼは痩けていって、小さな村ではどうすることも出来なくなって

もう私たちには神頼みしか無かった。

だから仕方ない。
私がここにいるのは、村の人達が言う通り仕方ない。

｢残念だけど、僕には天候を操る力はないよ。大きな力を使う神は大きな社にいる｣

『じゃ、あなたは何ができるのよ』

｢特には何も。キミと同じだよ｣

『…無能ってことじゃない』

なによそれ……。あんなに必死なってみんなお願いしていたのに

『馬鹿馬鹿しい。私帰る』

扉を押した
でも扉はびっくりするほど1ミリも動かない

おかしい。こんなボロっちい扉、いくら外から閉められているからってここまで動かないなんてことあるはずない

明らかに異次元な力が働いていて
神様なんてものが私のすぐ後ろにいるんだから、その非現実的な可能性だってゆうに有り得る

｢無理だよ。中からは開けられない
僕もキミも同じだって言ったでしょ？ずっとここに閉じ込められてるんだ｣

『でも昨夜は普通に開いて……』

｢外からは開けられるけど、もちろんここを開ける人はいないよ
待ってもいいけど、期待しない方がいいよ
キミが死ぬ前に開くかどうか……｣

『ハハ……ｯ』