間違いの道から、新しい道へ ページ49
-Aside-
またお構いなしに時は流れて、立ち止まる私の背中を追い越してゆく。
新しい季節が汗を滲ませ、肌を容赦なく熱くさせる。
恵美さんの愛情に甘えたかったのは私の奥にしまい込んだ本当の心だったけど、それでも時間が戻るわけもなく一度踏み外した道の足跡を消せない私は、あの温かい胸に飛び込めなかった。
私の犯した過ちがある限り、恵美さんの中での傷も消えない訳で、近くに居ればその罪悪感に圧し潰されそうだった。そして、髪の先まで恨まれる日が来ないとも限らず、夫婦の幸せの
二人は幸せになったのだと分かった。あの時の彼女は、幸せそうだった。それ以外の言葉では表せないほどに、ただただ幸せそうだった。
あの時も今も私が願うことは、その幸せが続くことだけだった。
今日の仕事は少ない。終わりに近づいた夕暮れ、由貴に肩を掴まれ振り向くと、そこには何か隠している彼女の表情があって、私は手を止めた。
「合コン?」
何かと思えば、今夜の合コンへの誘いだった。
「うん、合コンというより飲み会かな。友達が計画してて、良かったら誰かって」
「でも、私は遠慮しとくよ……」
そういう場や初めて会う人が苦手な私は、全く気が進まなかった。
「そんなこと言わずに来て? 確かに疲れるかもしれないけど、気分転換にもなるかも……?」
由貴はその友達が苦手なのだと悟った。その表情に折れた。
「私、あんまり話せなくてもいい?」
「話すのは誘った方の役目でしょ」
飲み会の場所に着き、由貴が友人の名前を告げると席に案内された。既にメンバーは集まっていて飲み会は始まっていた。
けれど私はその中の一人と視線を合わせて固まった。それは隆だった。そして私は彼の存在に戸惑い、ずっと気もそぞろだった。
お開きになった後、彼に呼び止められた。空気を悟った由貴はその直後に帰ってしまった。
無言で歩き続け、彼が不意に足を止めた。
「もう一度友達を始めないか?」
私は頷き、今までのことを謝った。
すると、彼は微笑んで手を差し出した。
「よろしく」
私も微笑み、長い握手を交わす。
疲れきった私は、人に甘えて傷つけた。感謝と償いを胸に、もう一度、生きる道を歩いてみようと思う。
完
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
あ - 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時