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体伝いに ページ30

-朝倉side-

 僕の為に流されたAの涙が、ただ愛しいと思った。

 "A"

 久しぶりにその名前が声になり、すうっと空気に消えていった。

 会えたら、その姿が目に映ったら、その声が聞こえたら、触れたら、今まで冷静を装っていた感情が、その覆いを脱ぎ去り溢れ出した。

 素直な自分が胸の中で何かを叫んでいる。

 僕は純粋に彼女に会いたかったんだ。会えない時間が寂しかったんだ。心の奥の本当の気持ちを認めるのが怖くて、何かと理由を付けて悩んでみたり考えてみたりしていただけだった。

 自分の気持ちを確かめるもなにも、本当は分かっていたのかもしれない。

 今その愛に代わって涙が頬を伝って、通り過ぎる風がその道筋だけを冷たくする。

 それなのに、やっと自分の想いを向き合ったのに、彼女は、何も話してはいけないと、目の前の幸せ見逃すなと、そんな風に僕を拒絶する。別れの言葉を投げて、僕の胸を押す。

 そんな彼女が憎らしくて、胸に伝う柔らかさが僕を切り裂く。

 彼女から僕に触れたその温もりが、心をぎゅっときつく締め付けて、痛くて苦しい。


 君は、離れている間、何を思い、どんな時間を過ごしていたのだろう。

 こうして僕を拒絶するということは、僕に会いたくなかったのか、寂しくなかったのか、このまま離れていたかったのか、二人の思い出なんて忘れてしまいたかったのか。

 それならなぜすぐに手を離さない。

 恋しいという気持ちが、君も僕と同じだったと信じていいのか。


 その手首を掴み、彼女の体を力任せに引き寄せた。


 君を愛している。


 想いが痛いくらいに流れればいい、苦しいくらい伝わればいい。

 抵抗する彼女を抑えるようにきつくきつく抱き締めた。

 これから先ずっと一緒なんて叶わないと分かっている。でも、今は離れたくなかった、離したくなかった。


 そして弱々しく儚くなった彼女の体に気付く。
 心配して気遣えば、彼女はもう大人しく僕の腕の中で包まれていた。

 何も話さない、小刻みに震えているように感じる肩、全てがいじらしかった。

哀しまずに生きて→←少しの後戻り



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設定タグ:オリジナル , 名前変換 , 不倫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
- 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
- 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時

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