堂々巡り ページ23
-朝倉side-
今までAのことを、自分の夢を託しすための存在、虚しさを埋めるための存在と思っていた。
冷たい気持ちで居たわけではないけれど、本当の自分を全て見せていたわけではない。
愛おしいと何度も思ったけれど、それは恵美に感じるものとは別物だった。
同情や自分勝手な理由だけじゃなく、それ以外の何かを彼女に感じていたけれど、それはときめきを伴うような愛情とは違った。
自分にとって彼女がどういう存在だったのか、あれからずっと考えている。
何を想い、彼女を抱いていたのだろう。
何を求め、彼女を繋ぎ止めていたのだろう。
はたまた、彼女にとって自分がどういう存在だったのか、それも分からない。
彼女は、僕を愛していたのだろうか。愛していたとしても、どういう意味で僕を見ていたのだろうか。
同じ問いを何度も自分にかけては悩んでの繰り返しで、また日付がめくられる。心配そうな視線で僕に声無き問いかけを送る恵美に、下手な愛想笑いを何度も返している。
ある日の夕方、彷徨う気持ちに疲れ、もう一度Aに会えば何かハッキリすることがあるだろうか、と随分身勝手な理由付けで、彼女に電話をかけた。
今までにかけ慣れた番号だったのに、感じたことのない緊張感が襲った。着信音が重なる度に、不安も濃くなってゆく。いつぶりだろうか、こんな風に手に汗をかくなんて。
でも結局、彼女の声が聞けることは無かった。
普通に考えたら、別れた相手、ましてや不倫関係だった男の電話をとらないのは当たり前なのに、それが悲しかった。
電話の前に君は居て、僕の名前だったから出なかったのか。それとも、何かしていて気付かなかっただけか。
寒さが本格的になってきた頃、もう一度君の声を聞こうとしたけれど、話し中の虚しい電子音だけが聞こえた。
その相手は誰だ、と筋違いな苛立ちを感じた。
さよなら、と僕に背を向けたAは、今も僕の事を思い出すことがあるのだろうか。
こんな願いは迷惑だと分かっている。やり直そうなんて言わない。でも、もう一度だけでいいから君に会って確かめたいんだ。
もし彼女の職業も状況も全く違ったら、僕は彼女をどう感じたのか。
同じように離れたくないと思ったのか。
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
あ - 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時