幸せだからいい〜その2〜【名前変換オリジナル】

寂しさという罰 ページ11

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　不安定な足取りでまた電車に乗った。乱れた髪も、頬に残るパリパリの筋もそのままで。

　大学近くの由貴の部屋のドアに着いたとき、今日の疲れがどっと睡魔となって襲った。腫れぼったい目を何とか引き上げながら、インターホンを押す。

　扉が開かれ、迎え出てくれた由貴に倒れ込むように中に入った。驚く彼女の温かい体温に受け止められて、安堵に包まれると共に声がこぼれた。

「あの人が……お父、さん……が、居なくなっちゃった」

「は……？」

　そこで力尽きた。夢と現の境目で、ああ、バチが当たったんだ、と納得した。

「A……もう休んでいいよ」



　携帯のアラームが意識の遠くから聞こえる。いつもと違う体重の沈み方に違和感を感じて、僅かなうなり声を漏らしながら、重い瞼を薄く開けた。

　見慣れない部屋とベッドに戸惑うが、徐々に覚醒する脳によって、ここが友人の部屋だったことに気付き胸を撫で下ろす。

　嫌々に上半身を起こすと、ぐわりと視界が揺れて頭から血液が引く気持ち悪さに襲われる。既にアラーム音は自然に止まっていて、額を手で支えながら携帯を掴んで画面を見ると、表示されている曜日と時間に焦りが込み上げる。

「大変、仕事！ どうしよう、朝ご飯とお弁当……あ……」

　そっか、あの人はもう居ないんだった。

　眠りの中で忘れていた傷がまた痛みを伝えて、涙腺と鼻の奥に刺激が走る。

　しかし、そうやって視界を潤ませた時、感傷に浸っている暇はないと言わんばかりに、押し寄せる平日の焦り。仕事を休むわけにはいかない。

　ハッとして由貴を探す。するとベッドのすぐ横の床に布団の抜け殻を見つけた。

　床に寝させてしまってごめんとか、昨夜どうやってベッドに辿り着いたか分からないとか、仕事の用意しなきゃとか、これからどうしようとか、色々と考えることがあり過ぎたけど、心身を支配していたのは、異常なまでの寂しさと不安。

　由貴はどこに行ったの、もう私の前から誰かが居なくなるのは嫌だ、お願い、ごめん、そばに居て。

　ふらつく体を鞭打って急いで寝室から出ようとした時、反対側からドアが開いた。

「あ、起きた？ って、大丈夫？」

　心配する彼女に、縋るように抱き着いた。

「良かったぁ……」

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