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蓋 : 平太 ページ10

この人は、
本当によく笑う人だ。
声を出して笑ったりはしないけれど、
いつも何かを飲み込んでは
その笑顔で、蓋をする。



きっと、ずっと


そうして来たから



そうして順応しないと
やって来れなかったのだろう。




「…平太?」


平「あ、すみません。
えと、この漢字ですね?
何だろう、俺も見たことないな。
辞典で探してみましょう」


「辞典?」


平「漢字について載っている本ですよ。
この漢字は…、あ!英吉利!
イギリスという国の名前ですね」


「ああ、そうだったの!
いいわね、遠い異国…」



夕方。
旦那さまに貰った本で、
読めない漢字がいくつかあると
聞いて来られたAさんの為に
辞典を持って来た。
この部屋には窓がなく、
廊下も陽が当たらない為か
この時間になるとだいぶ冷える。
Aさんの為に暖房を入れる。



平「…行ってみたことは、」


「ふふ、ある訳ないでしょう?
吉原から出たこともなかったんだから」




ああ、そうか。
だから、




平「……出て、みたかったですか?」


「そうね…、小さな頃、禿をしていた頃はね。
一度、脱走したこともあったわ」


平「脱走…!?」


「ええ。こどもの足だからね、
あっという間に捕まって
逆さ吊りにされて、鞭打ちされたけど」


平「…酷い、、」


「商品になるものを育ててるのに、
商品にならず、とんずらされたら
たまったものじゃないでしょう?
当然の報いだったのよ。
まあ、それで懲りたしね」



ころころと笑う、この人には
それが、これが、
当然なのだ。



ああ、そうか。だから、



何も疑問に思わないんだ。



平「じゃあ、…俺は郵便を取ってくるので…」


「ええ。辞典、ありがとう」



重くもない戸を閉め、玄関先へと向かう。
あの人の笑顔は時に、
見続けることが困難になる。



平「…はぁ」



外に出て、郵便物を確認していると
最近よく見掛ける人を門の向こうでまた見掛ける。
とても目立つ、髪色をしているので
すぐに覚えてしまった。
何をしているのだろう、営業かな。



四「平太」


平「あ、旦那さま!」



気が付くと旦那さまが後ろに立っていた。
門の向こうを一度見てから、俺に眼を移し



四「そろそろ出る。
明日の会議に出席して、内容を送ってくれ」


平「了解です」


四「それから、」



四辻さまを纏った風が
足元の落ち葉を舞い上がらせる。
この眼に捕まると俺はいつも、
呼吸の仕方を忘れてしまう。



四「Aを頼んだぞ」

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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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