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呪文 ページ9

ここに来て、どれだけ経ったのか
正確には分からない。

なぜなら、わたしの部屋には窓がない。
カレンダーがない。
時計もない。あった筈の携帯も見当たらない。

少しずつ、
わたしの世話をしていた下人も減り
今はほんの2、3人しかわたしに関わらない。
彼らに今日は何日なのか聞いてみても、
何故だか、答えてくれない。
もちろん、それは



「平太…!」


平「はい、Aさん」


「今日は…」




必要ない。





「…何でもないわ」


平「…そうですか」


「……」



廊下で呼び止めた平太が去り、
わたしはまた陽が届かぬ廊下に1人になる。



「……わたしには、必要ないこと」



納得させるように呟き、
わたしはまた自室へと身を押し込める。

四辻さまは仕事後、出張でなければ必ず
わたしの部屋に来てくれる。
ほんの数分の時もあれば
朝まで居てくれることもある。
仕事の話や、本の話
面白いとことを話しては
触れ合い、抱き合う。

わたしの部屋には
トイレ、洗面所、お風呂がついているし
何を望まなくとも
服やアクセサリーや本や食事が
次々に運ばれてくる。
広い広い屋敷には取引先の人と
仕事をする部屋もあるから、
勝手に出ることは禁止されている。
ここを出る必要性がないので、
何も困ってはいないのだけれど



がたっ



四「A」


「!?四辻さま!」



突然、開かれた戸から四辻さまが覗く。



四「また出張が決まってしまってね。
伝えに来た。今夜立つから」


「そうなのですか。
今度はどちらに?いつお帰りになられ、」


四「Aには必要のないことだよ」


「っ、…はい。あの、お気をつけて」


四「ありがとう」



四辻さまはいつも通りの笑顔でそう言うと、
わたしの隣に腰を下ろす。



四「この前、続きが気になっていただろう。
あの小説の下巻。買っておいたよ」


「わぁ、ありがとうございますっ!」


四「これを読んで、私の帰りを
いい子に待ってておくれ」


「ええ、もちろん…でも
わたしばかり、こんなにいろいろ
買っていただいて良いのでしょうか。
外に出るどころか、家のことも
ここ以外に行ったことがなくて
何一つ、役に立ていな、」


四「そんなこと、」



自分が不甲斐ないと吐露した、
わたしに降りかかった声は
冷静な美しい声ではなく
いつか見た、あの眼の奥のような深さで



四「Aには必要ないと
言っているだろう?
妻とはそういうものなのだから」



まるで呪文のように
わたしの中に積もって行く。

蓋 : 平太→←当然 : 銀時



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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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