この手を離すな【銀魂】2

商品でもないわたし ページ34

「…っつ、」


ベッドから降りて、
洗面台で顔を洗う。
体重をかけるとまだ痛む右足。
動けるようにはなったから
リハビリを兼ねて、
痛みに耐えて動かさねばならない。

わたしは動かせるのに
リハビリもできるのに
平太は……



頬から滴る水を眼で追い、
鏡に映った情けない顔の自分を見る。
毎晩していた化粧もせず、
もちろん手入れもせず、
誰に見せるでもない姿はまるで



「……商品でもない、わたしにはもう、」



とんとん



「っ！？…はい？」



がら…



土「…いいか？」


「土方さん！ええ、どうぞ」



突然、訪れた土方さんは
小さく扉を開けて様子を伺うと
立っていたわたしに少しばかり驚いたのか
一呼吸置いてから尋ね、入室した。

わたしは慌てて、顔を拭き
ベッドへ戻ろうと壁をつたう。



土「！…」


「え、…あ、ありがとうございます」



土方さんはそっとわたしの腕を取り、
身体を支えてくれた。



土「いや…。もう動けるのか」


「まだ痛みはありますが、
退院を早める為にも
リハビリを兼ねて動きなさいと言われてます」


土「………そうか」



ベッドまで辿り着くと、
わたしが座りやすいように
布団を動かし、足を上げるのを手伝ってくれた。



「ありがとうございます。
慣れられてますね」


土「職業柄、怪我人はいつも
周りにいるからな。
……この花は」



土方さんはわたしを座らせると
近くにあった椅子を持ってきて、
わたしの傍に腰掛けた。
窓辺に飾られた花束が風に揺れる。



「銀時さん…、万事屋のみんなが
お見舞いに持ってきてくれたんです」


土「うるせえ奴らが来てんのか…」


「個室なのでほんとに退屈で。
来て貰えると楽しいですよ」


土「迷惑だったら、すぐ俺に言えよ」


「まさか。…でも、ええ。分かりました。
えと、今日は？」


土「あ？……ああ、いや、なんだ。
様子を…見に」


「わざわざ？…ありがとうございます。
お忙しいのに」


土「別に、いつもと変わらねぇよ」



なんてことないって顔で
長い足を組み、
顎に手を置く土方さんの顔を
じっと見つめる。



土「………な、なんだ」


「土方さん」


土「…？？」


「眠ってませんね？」


土「…あ……？」


「何度か、お逢いしてますし
そのくらい、分かります。
………すみません、
わたしの、四辻さまの事件のことでですよね。
それなのに、わたしの様子まで
気に留めていただいて…申し訳ないです」


土「…………」

途端に騒つく : 土方→←もう一度 : 土方

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す