この手を離すな【銀魂】2

普通、 ページ4

四「済ませておいた」


「…え？」



朝食。
今まで見たこともなかった、
大きなテーブルで
四辻さまとわたしだけで召し上がる。
周りに下人の方がたくさんいて、
わたしが何か落とそうものなら
すぐに飛んで来てくれる。

普通、

を知らないわたしは
少しずつ、色んなことに
慣れ行くしかなかった。



四「昨夜、出しておいた。婚姻届」


「確か、わたしのサインが必要な物だと、」


四「いや、必要ないよ」


「…そうだったのですか、
ありがとうございます」



焼き立ての美味しいパンを齧る。
サクサク、と音を立てて
崩れていくこのパンを
わたしは初めて食べた。
上手に口に運ぶことは
禿時に習って、習得した筈なのに
どうにも上手く食べれない。



四「気に入ったか？」


「え？あ、…はい！
でも上手く食べれません」


四「それが普通だよ。
ほら、私だって…、サクっ」



そう言って、口にパン屑を付け
パラパラと溢れ落とす四辻さまは
見たこともないほど、可愛らしくて



「っぷ、…ははは！」


四「おいおい、笑い過ぎだろう！
Aの真似をして見せたのに」


「ふふふ、ごめんなさい…
四辻さまがまるで子どものようで」



ふんっ、と拗ねて見せる様も
この人にもこんな表情があるのかと
とても新鮮に見えて。



「…わたし、正式に四辻さまの
妻になったのですね」



改めて、
あまりにも大それた肩書きだと
わたしに重く伸し掛かる。
四辻さまはナフキンで口元を拭ってから



四「ああ。だから、私の傍に
居てくれれば良い」



と何度目かの言葉を口にした。
わたしは微笑みで返事をする。



四「ご馳走さま…、
今日は大きな手術がある。
家のことは頼んだよ」


「はい！頑張ってください！
あ、あの…四辻さま？
わたし、今日、」


四「ああ、ひとつ頼みなんだが
この婚姻を世間にまだ広められない。
先にお世話になっている取引先に
伝えねばならないからな」


「…この前、何人か
ご挨拶をさせてもらった方以外にもですか？」


四「あんなのは一握りにも満たないよ。
直接挨拶していないのに
公表するのは信用に欠けるからね。
家のことや仕来りも学んで欲しいし、
しばらくは外出をしないで貰いたいんだ」


「…分かりました。
皆様にお顔見せできるまでは
修行させていただきますね」


四「そんな堅苦しくなくていいよ。
家でのんびり過ごしておいて」



ここに来て、たくさんのことに
そういうものなのか
と知り得る事柄に頷き過ごしている。

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