この手を離すな【銀魂】2

タイミング : 銀時 ページ13

銀「…あ？」



偶然にもトイレに起きた俺は、
布団に戻ろうと通り過ぎた電話が
ワンコールだけなったのに
思わず、声を漏らしていた。


誰だよ、こんな遅くに。
しかもワンコールって。
超絶迷惑極まりない奴じゃねえか。
ああ、もうさっさと布団戻ろ。さみぃ。




ばさっ…




銀「………まじかよ」



完全に眼覚めた。覚めちまった。
覚めちまいやがった。
あの電話のせいだね。
完全にあの電話のせいだよね。
横通ろうとしたら、急に鳴ったんだもん。
いや、電話なんていつも急に鳴るもんだけどよ？
こんな夜に。しかも横通るタイミングで。
どっかで誰か見てた？くらいのタイミングで。
もはや、ホラーだよ。怖いよ。やめて？
考え出したらほんと怖くなってきたよ？やめて？
またそれで眼覚めちまうだろ？



銀「…っだあぁ！」



布団を頭まで被り、余計な思考を追い出す。
一度考えるとしつこいんだよ、ホラー系は！
違う！なんだ！！ほら！ほら！あれだよ！あれ！
俺が心底、待ち侘びてた！！
Aちゃんからの電話！！ね！？
そうだよ！！そうに違えねえよ！
なんだよホラーって俺知らねえよ！？



銀「……相も変わらず、」



俺はむくりと起き上がり、
覚めた眼をこすりながら居間に戻って
一度だけ鳴った電話を見つめる。
こんな未明にかけて来る奴なんか、
間違い電話に決まってるのに
Aちゃんだなんて、相も変わらず不憫な野郎。

押入れからのけたたましい鼾を背に受け、
情けなさがベタ塗りされた気持ちを晴らしに
夜な夜な散歩でもして、ついでに
いちご牛乳でも買いに行くかとブーツを履く。


かんかんかん…


階段を降りる音が響く未明。
随分と冷えるようになって来た。
空気が澄んでんのか、下弦の月が綺麗だ。



銀「お月見でもしますかね…」



腕を袖に入れ、ふらりふらりと歩く。
かぶき町は眠らない町だが
この辺りには人っ子ひとりいやしねえ。
のんびり、自分の情けなさと向き合うには
もってこいだわ、ったく…。






コンビニから出て、
買ったいちご牛乳にストローを指す。

ちゅーっと吸いながら、
月をまた見上げようと
橋の前で顔を上げた瞬間

危うく、いちご牛乳を落としそうになった。




銀「………A、ちゃん？」




届かねえような、
独り言の声量だったのに
その横顔にはちゃんと届いてくれたようで
艶々とした長い髪を揺蕩わせ、
振り向いたのは



紛れも無い、彼女だった。




「…銀時、さん？」

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