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うろ覚え ページ12

細いけれど、わたしのとは違う。
男の人の手だ、と当然のことを考えた。
毎晩、違う人の手に触れていたのに
四辻さまだけの指に慣れて来ていたから、
今、わたしの指を繋ぐ平太の手に
少しばかり、意識が集中してしまった。



平「ここからなら、夜間門番に見られません。
少しくらいなら出られます」


「平太、でも、」


平「ずっと!」


「!?…」



身を跼め、屋敷の小さな勝手口から
辺りの様子を伺う、平太。
久しぶりに出た外は空気が冷たくて
そして、月が綺麗だった。



平「…おかしいって、思ってた。
でも旦那さまのことは信じてるから
Aさんを、大切にされてるんだって、
でもこれじゃ、Aさん…
吉原に居た頃と何にも変わらない…」


「…平太」


平「Aさんに関わることが出来る下人は
Aさんに何を聞かれても、
答えてはいけないことになってます…。
Aさんの部屋は屋敷に増築された、角部屋で
ここに立ち入ることも基本禁止されてます。
理由は…分かりません。Aさんを
大切に想い過ぎているのか…。でも
まるで、籠の中の鳥だ。
俺、あの蓋をするみたいな笑顔
もう見てられなくて」


「……」


平「とにかく、今夜だけ。
少しだけでも外に出ましょう!
出たかった、ですよね?」



平太は、こんなに冷えるのに
額に汗を滲ませながら
言葉を手繰り寄せて話してくれた。
わたしに向けたその笑顔は、緊張していた。



「…うん!」



外に出たかった、かは
正直、分からない。
だけど、あの

必要ない。
そういうものなのだから。

という言葉の呪文に
考えることさえ、放棄していたようにも想う。
わたしの手をしっかり握った平太は
走れますか?と確認してから、
小走りに屋敷から離れた。
足がもたつく。
何ヶ月もまともに動いてなかったからだ。
何だか、身体も痩せ細っていたみたい。



「はぁはぁ、…っ!平太、待って!」


平「行きたいところでもあるんですか、」



わたしは見つけた、それに駆け寄る。
平太にお願いをして小銭を入れ
うろ覚えの番号を押してみる。



ぷるるる…



「……」



がしゃんっ



平「え…、切っちゃうんですか?
かかりませんでした?」



わたしは公衆電話の受話器を離し、
ううん、と首を振る。



「…うろ覚えで、確かじゃないの。
平太、万事屋さんって知ってる?」


平「万事屋?」


「…確か、こっちの道じゃなかったかな。
ちょっとこっち行っていい?」


平「あ、はい!」

タイミング : 銀時→←狭い籠



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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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