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まだ日中はセミがうるさく鳴いているけれど、夜になれば前より少し涼しくて
夏ももう終わりに差し掛かっていた
少しいつもより帰りが遅くなって、早足で向かったアパートの下で予想もしなかった三ツ谷くんとばったり会ってしまって。
その後ろにマイキーくんがいるのに気が付いて、彼の家から出てきたんだなと理解が追いつく
なぜだか少し気まずそうなマイキーくんが、「駅まで一緒に行けよ」と部屋に戻ってしまったので断るにも断りきれず、来た道をなぜだかゆっくり歩く三ツ谷くんに合わせて歩いていく
「俺さー」
と急に顔を上にあげて三ツ谷くんが言った
「ロス行くんだよね、デザイン留学で」
……知ってる。とっくに。
三ツ谷くんの口からその事が出るなら、きっと今カノさんは私に会ったことを三ツ谷くんには話してないんだろう
驚きもせずに何も言わない私を、三ツ谷くんは少し不思議がっていたように思う
また会えなくなる。この人に。次会えるのは、
……いや、次っていうか。次なんて、ないね
今カノさんが『私にはタカちゃんが必要』って言ってたけれど。あれ、嘘だと思うな。あの人は、三ツ谷くんなんて居なくても生きていける。精神的にも自立してる。
三ツ谷くんが必要なのは、きっと私だと思うな。とか。
あの時は三ツ谷くんと肩を並べられているって思ってたけど、三ツ谷くんの方が私よりずっとずっと大人で。
私の1歩前に立って、手を引いてくれてたんだよね。
自分で思っていたより、私はずっとずっと子供だった。
修学旅行のお土産で買ってくれた飴、嬉しくて食べずに取っておいたら溶けちゃって結局食べれなかったんだよね、とか
小学生のときに彫った刺青。髪の毛で隠してること私にだけ教えてくれたよね、今カノさんは知ってるの?とか
三ツ谷くんが大切にしてくれた分、私は平等に返せてたのかな、とか
ちがうよね、そうじゃなくて。
きっともう、三ツ谷くんに触れることは一生出来ないけど
「……三ツ谷くん」
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作者名:Anju | 作成日時:2022年8月13日 17時