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昼頃の電車は空いていて。


自分から帰ろうと言い出したくせしてカフェから駅までの道がものすごく寂しく感じて、歩くスピードが気持ち遅くなる



「昼でも痴漢とかあったら困るから、最寄りまで送る」
そう言ってくれた三ツ谷くんの優しさに甘えて。


私の最寄り駅を知らない三ツ谷くんには黙って、特急で早く帰れるはずの電車を見送ってわざと各駅停車に乗ってしまう自分の狡猾さ










「迷惑かけてごめんね。色々とありがとう、」


最寄りの改札まで一緒に来てくれた三ツ谷くんは、電車に乗ってからの帰り道ずっと無言だった



私の言葉にもすぐ返答がくる訳でもなくて、何となく気まずい雰囲気から逃げるように「またね」とICカードを手探りで探す












「スマホ」

とボソッと聞こえた三ツ谷くんの言葉にえ?と振り返る



「スマホ、貸して。LINE交換するから」
と左手に持ったままだったスマホを取られる






「お前、パスコードちゃんとかけろよ」

「この間スマホ変えたばっかりで、面倒くさくて」

「高校の時もパスコードつけてなかったよね、A」





変わんねぇな、と笑いながら三ツ谷くんは片手に自分の、反対の手に私のスマホを持っておそらく連絡先交換をしてくれている



高校の時も付けてなかったっけ。自分ですら覚えてないことを、この人は覚えていてくれている。


付き合っていた時三ツ谷くんにスマホ見せて、なんて言われたことはなかったはずで。一緒にいる時に見えたのだろうか




大切にしてもらっていた。当時感じてた以上に。




はい、と三ツ谷くんから返された画面を見れば見慣れていた連絡先の並びに《三ツ谷 隆》と横入りした名前



「もう消すなよーー、まじで」

「振り?」

「ちげーよ、携帯番号も登録しといたから。また連絡する」




じゃ、と軽く手を挙げて離れていく三ツ谷くんを見送ったあとスマホを確認すれば確かに知らない番号が、1番上にあった



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作者名:Anju | 作成日時:2022年8月13日 17時

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