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電話の向こうで、彼女さんは三ツ谷くんになんて言ったんだろう。
正直。三ツ谷くんの隣を歩いて、こうして向かい合って、笑って、互いの顔を見合って。愛おしくて。幸せで。
出来ることならいつまでもこの時に居座っていたかった。
けれどこの甘い時間の中で、1度でも"今カノ"という存在に目を逸らしてしまえば、もう自分を騙すことは出来ない。
断れずここまでついてきた自分も、街角のショーウィンドウに映る三ツ谷くんと私をお似合いだと満更でもなく思ってしまう自分も、
もしかしたら、三ツ谷くんが、また追いかけてくれるんじゃないかって、心のどこかで思っているのを自覚して。期待しないようにしてる自分も。
すごく、嫌だ。
これ以上、三ツ谷くんの隣にいるのは失礼だ。
「もうそろそろ行こっか」
膝の上に置いたバックに目線を落として、まだ中身の残ってるプラスチックのカップに手をかける
「まだ中身残ってるのに?」
不思議そうに私の顔をのぞき込む三ツ谷くんを視界の端に捉えながら「ちょっと甘くて、」と言い訳する
三ツ谷くんはふーん、と持っていたカップを置いて、
「甘党なのに?」と小さいテーブルの下で立ち上がろうとした私の足を、向かいに座る三ツ谷くんの足が外から挟む
「ち、ちょっと、」
「俺もまだ残ってるし」
ああ、やっぱり駄目だ
三ツ谷くんと居ると、私は弱くなる。
徐々に、痛くない程度だけど力が強くなる三ツ谷くんの足から抜け出せずに、しぶしぶとバックのハンドルにかけていた手を離す
フラペチーノにまた口をつけると、さっきよりもずっと甘く感じた
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作者名:Anju | 作成日時:2022年8月13日 17時