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「わ…、おいしい」
「これも旨い!」
メインの食事を終え、デザートに私はアフォガード、翔くんはフォンダンショコラを注文した
口に入れた瞬間に広がるコーヒーの苦みとコクのあるバニラとの相性が最高で思わず本当に落ちそうになる頬っぺたをパッと押さえると、向かいに座る翔くんが目を見開いた後笑った
「ははっ!!落ちない落ちない!」
「………」
どうやら何かのツボに入ってしまった様子で肩を震わせているが、店内ということもあり声は抑えている
しかし笑われているという事実は変わらない
なんだか無性に恥ずかしくなって恨みがましくじとりと翔くんを見るが効果はない
寧ろ余計面白がっている
「ごめんっ!花子ちゃん普段鉄仮面みたいなのによく話してみると行動が面白いし意外と分かりやすいから可愛くってつい!!」
既視感に、は、と喉の奥から声にならない音が漏れる
以前同じようなことを言われたことがあったからだ
裏表のない明るい笑顔
無邪気な雰囲気
自覚はなかったが、高専時代に憧れた彼の死はどうやら思ったより自分の胸の内に深く刻み付けられているらしい
翔くんと初めて会った時から閉じたはずの蓋が徐々に開いていくのを自覚していた
同時にあの頃の自分では理解できなかった感情が、良いのか悪いのか今でははっきり自覚することができ、今更ながら彼がもういない事実に無性に身体を掻き殴りたくなる様な衝動に襲われる
『……貴方はまるで、氷の様ですね』
彼であった…もう既に空になった物を前に何一つ感情を表すことが出来なかった私にもう一人の同期が言った
そうね、と呟いた筈の言葉は声にならなかったが心の内で激しく同意した
それなりに仲が良かった同期の死に涙どころか表情一つ変えない自分は異質で欠陥品だった
姉や、彼みたいに
そこにあるだけで周りを明るく照らす存在に憧れた
しかし自分が持つのは憧れから一番遠いそれ
…滑稽ね
ふふ、と心の中で自身を嘲笑した後、翔くんに目を向けた
「…あ、ごめん!鉄仮面って悪口じゃん!!」
「え…?あ、別に怒ってないよ…昔同じこと言われたことがあるなって思っただけで」
「昔?友達とか?」
「友人…ではないかな。高校の時に同級生に言われたことがあるだけだよ…そんなことより早く食べよう?」
あまり触れて欲しくはない話題に話を反らすと、私の意図に気が付いたのか翔くんは「うん」と笑顔で返してくれた
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時