▼ ページ41
「……悟?」
僕の突然の行動に驚いた花子は髪を拭いていた手をそのままに、直ぐ下にある僕の頭を見下ろす
行き場のなくなったタオルがパサリと床に落ちた
「…どうかしたの…、疲れてる?」
花子がどんな表情をしているかは分からないが、優しい声色に淀んでいた気分が晴れていく
意味が分からないなりにも取り敢えず僕の頭を撫でてみることにしたらしい
花子に一定に撫でられる頭が心地良すぎて普段張り詰めている気はどこへやら
…以前だったらこのままズルズルと事を致して微睡んでいたのだが…
「あー…」
辛い
ここで押し倒したら嫌われるかな
いや、嫌われはしない…と思う
ただ心の距離が遠退くだけで
…駄目じゃん
やっぱシないって約束はしない方が良かったかな
でも約束しない限り花子戻って来なくなかった?
「…まさに肉を切らせて骨を断つ……」
「…悟?」
「んー、何でもないよー」
口に出ていたらしい
更にグリグリと頭を花子の胸元に押し付けた
「………食べたいなあ」
「パン焼けたよ、お待たせ」
食べようか、と続けた花子に食べるものが違うんだけどなと内心ゴチた
しかしそんな下心を表に出すわけにもいかず「うんうん、お腹減ったー!」と花子を腕から離してそのまま手を引き食事が用意されたテーブルに向かう
お互いの席に着いて挨拶もそこそこにビーフシチューに手を付けると濃厚な深みのある味が口の中に広がった
「…うまいね」
「ありがとう」
淡々と返す花子は恐らく社交辞令とでも思っているのだろう、毎回こんな感じだ
結婚当初こそ家での環境からか料理のりの字も知らなかった花子だが、本を読んだりは勿論、性に合っていたようでメキメキと腕を上達させていった
妥協しない性格も合間ってそこらの料理屋より余程旨い
添えられたパンを口に入れたところでそういえば、と顔を上げた
「喫茶店での仕事どんな感じ?」
「どんな……、楽しい、かな」
「接客はしないんだっけ」
「そうだね。あんまり印象良く出来ないから…」
喫茶店でもウエイトレスではなく主にキッチンでの作業をするらしい
雰囲気や口調は柔らかい花子だが、やはり表情豊かとは言えず第一印象はあまり良く見られないだろう
だが、あくまで小さな町の喫茶店レベルなので常連客が多く、打ち解けてしまえば心配事もなくなると思うが
1583人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時