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「まあまあ!伊地知はいっつもこんな感じだからさ、心配しなくても大丈夫だよ」
「……そう、ですか?」
悟の言葉に昔もこんなにオドオドしてたかな?と怪訝な顔をしていると、そのまま顔を覗き込まれニッと笑われる
「ホントに久し振りだね。元気だった?」
「はい、元気でした…五条さんも息災そうでなによりです」
「……えらく他人行儀になったね」
悟の纏っている雰囲気が僅かにピリつく
流石に3年以上も共に居ると相手の機微が分かるようになるものだ
だけど悟が苛ついていることはあまり見ることがなかったため珍しさに少し驚くと同時に自分の何が勘に触ったのか皆目検討もつかなかった
「…、何か怒らせてしまいましたか?」
「まあねー。いきなり予防線張られた気分になって少し寂しいかな」
その言葉に面食らうが表には出さないように努める
「すみません、ですが立場的に失礼は出来ませんので」
いくら元夫婦だとはいえ悟は御三家であり呪術師最強の人物である
偽りの夫婦であったのなら尚更
本来なら力の無い一介の術師が気安く話していい存在ではないのだ
「ふーん…、“立場”ねえ」
言いながら目隠しに指を掛け、隠された瞳の片方だけを晒した悟は私を覗き込んだ体勢のまま瞳をスッと細める
「じゃあ、教えてくれない?どうして術師として戻ったか」
「…元より私は呪術師を目指すために高専へ入りました」
「はは、勿論知ってるよ。じゃあついでにどうして術師になろうと思ったのか教えてくれない?」
「…」
私は質問意図が分からず、心を見透さんばかりの美しさを持った瞳を見つめ返すがその瞳は逃がす気はないことを物語っていた
だが彼に話す必要があるのだろうか?
その宿命により多くの命を救ってきた彼に伝えることは憚られた
…こんな自分勝手でしかない理由なんて
「…それは“お願い”ですか?」
「んー…“上司命令”かな!」
「……」
何で
物言いた気にジトリと見ると、やはり笑って返される
…何故自分は悟にこの理由を知られたくないんだろうか
目線を下に向け自分に問い掛けた
この期に応じて知られたくないと思っているのか
嫌われたくないと思っているのか
ああ、やっぱり嫌い
こんな自分が大嫌い
「……ずっと……死を、願ってました」
悟が目を見開き、運転している伊地知さんが息を飲んだ
そう、
私はずっとずっと
いなくなりたかった
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時