治くんの彼女。【HQ】 (ページ8)

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お昼休みのチャイムが鳴った頃。

財布を持ったAが購買へ向かう。

A(お弁当忘れるとか最悪や)

購買に辿り着くと案の定戦場のようになっている光景が目に入る。

「おい！それ今俺が取ったやろ！」
「あ？手に取ったもん勝ちやろが！」

男子がギャーギャー騒ぐ中、Aが少し後ろで立ち止まる。

A(あの中入りたくないなあ。でも入らんかったらお昼なしやしそれはキツイ)

意を決したAが戦場に飛び込んだ。

周りにぎゅうぎゅうと押されながら前に進もうとするが男子の壁がブロックして前が全く見えなくなった。

A「ちょっと、あの、すみません通して下さい」

Aが声を上げても直ぐに掻き消される。

どうすることも出来ず立ち往生しているとすぐ後ろから声が聞こえた。

「おばちゃん、メロンパンと焼きそばパン」

聞き慣れた声に身体が反応する。

A(治くんの声！)

ぱっと振り返るとAの顔が青ざめた。

侑「...？」

バチっと目が合い、Aが咄嗟に前を向いた。

A(治くんの声と聞き間違えるとか彼女失格や...切腹や...)

「あー...おばちゃん、クリームパンも追加で」

「はいよ～侑くん今日も男前やねえ～」
「ちょっとそれラストのやつやん！おばちゃん宮兄弟に甘いって！」

聞き間違えて落ち込むAの後ろで侑が更に注文する。

どんよりするAの肩を侑がトントンと叩いた。

侑「こっちおいで」

昨日治にバチバチに責められたAの足が竦む。

A「あー...わたしパン買わないといけないんで...」

ぱっと前を向くと【本日分完売】の文字が目に入る。

侑「昼飯なしはキツイなあ」

ははっと笑う侑が意地悪な笑みを浮かべる。

A「...なしで頑張ります」

ぺこっとお辞儀したAが侑の前を通り過ぎようとした時、侑がAの腕を掴んだ。

Aがびっくりして振り返ると、侑がクリームパンを手渡した。

A「え、いやいや」

Aが返そうとすると侑がグッと力を入れて突き返す。

侑「この前のお礼や。」

クリームパンを手に取ったAが、見上げてお礼を言った時侑の表情が曇った。

髪を下ろしていて気付きにくいが、しっかりと付けられた印が目に入る。

侑が呆然としているとAが「やっぱり悪いんで」とパン代を侑に握らせて足早に去っていった。