第86話 ページ43
Aside
期末テストが終わって最初の土曜日。そういえば、東京は今日から行くって言ってたな。
めずらしく静かな体育館を見下ろして、頑張って勉強をしていた彼らを思い出した。
その時、聞きなれた声が聞こえた。
日「うっし、ぜってぇ合格だ!!」
影「ったりめ〜だろボゲェ!!」
『あの二人、合宿じゃ…』
期末テストで赤点取ったら追試…だったか。
まさかあの二人が…
勉強会の時によく出てきていた二人の名前。おそらくバレー部にとって重要な人なのだろう。その二人がここにいるってことは、きっと今頃合宿に参加しているメンバーもより一層気合いが入っているはず。
テストが開始されたであろう頃、校門に一台の車が入ってきた。よく見れば、田中君のお姉さんだった。
いつもの私なら気に留めなかっただろうけど、何故か自分から声を掛けていた。
『あの…』
冴「ん?あっれ〜龍の友だちの美人さん!?」
最後の美人さんって…言われても反応に困るんだけど。
『何をしているんですか?学校なんかに…』
人の事、あまり言えないけど。
冴「いや〜それがさぁ…」
お姉さん曰く、日向君と影山君は赤点を取ってしまい補習テスト。終わり次第東京に向かうためにわざわざ車を出したそうだ。
多分だけど、田中君がお姉さんに頼み込んだのだろう。
あの人普段は煩いけど友だちや後輩思いの、根が良い人なんだろうと感じていたから。
冴「弟に頭下げさせるわけにもいかないしなぁ!」
きっと、お姉さんも弟思いなのだろう。
そうでなければ、わざわざ何時間も掛かる東京に車を出すなんて、しないだろうから。
『優しいんですね。お二人とも。』
冴「かわいい弟だからな!龍もかわいい後輩のために、何かしてやりたかったんだろ。」
姉弟の鏡だなと思う。
冴「そういやなんだかんだ名前聞いてなかったな!私は冴子!冴子姉さんと呼んでくれ!」
『私はA…夜月Aです。お好きにお呼びください。』
冴「ならAだな!今日は何しに学校来てたんだ?補習じゃないでしょ?」
『…私は……土曜日はいつもここに来ています。家にいるより、ずっといいので。』
変な風に思われたか。なんだか気まずい。
冴「そっか!ならさぁ、あいつら補習終わったら東京向かうし一緒に乗りなよ!」
『……はい?』
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作者名:極東華梛魏 | 作成日時:2021年8月2日 20時