7 (あるじ、とか言わなかった？) ページ7
そこにはあたしが生まれてから今まで生で見た青年の中で、ダントツ1位を秒で勝ち取った美青年が立っていた。…ボロボロで。なんなの、何でみんなこんなボロボロなの？？？？
水色の髪に王子様と騎士の中間みたいな恰好をしてる。
状況と青年の恰好が全然繋がらなくてあたしは更に混乱を強いられた。
彼が、後ろ手で襖を閉める。
たった五分程度の出来事で、あたしの一日分の体験容量はとっくにカンストしていた。
何、本当に何が起こってんの、
ていうかさっきあの男の人、なんて言った？
(あるじ、とか言わなかった？)
あたしは本当にわけが分からなくなって、頭も体も全てが固まっていた。
身を屈めながら苦しそうに息をし、柱に手をつきながら虚ろな目であたしを見ていた美青年は、
｢？！ちょ、｣
そのままそこにがくりと膝を着いた。
大丈夫か、と声を出す間もなく更にあたしを固まらせる景観がたちまちそこに現れる。
｢は、……、？｣
｢……っ、｣
美青年が、土下座していた。
あたしに。
｢お願いします、…·お願いします…っ｣
微かながらでもはっきりと聞こえる懇願。床に頭を擦り付け、ただただ同じ言葉を繰り返してる。よく見ると、彼の手にはさっきあたしが廊下で見たバキバキの短刀がこの上なく大切そうに握られていた。
｢お願いします……っ！｣
｢〜っ！｣
美青年の懇願に、涙声が混じり始めたあたりで、あたしは、ばっと傍にいた狐を見た。
狐はあたしから目が離せない呪いにかかってるみたいにあたしをずっと困惑と混乱の顔で見ていた。
｢あのひと、なんであたしに土下座してるの、｣
｢…｣
｢あのひと、誰なの？知ってる…、？｣
｢…、｣
イケメンお兄さんの土下座と謝罪と涙を背中に受け続けていたら、もう何もかもがごちゃごちゃになって、とうとうあたしの目にまで涙が滲んできた。パニックで、息も浅くしか出来ない。
目頭が熱い。帰りたい。帰りたい。
もう、わけがわからない。夢なら覚めて欲しい。ドッキリならあたしの涙でとうとうネタばらしだと、看板とカメラと一緒に一刻も早くスタッフか誰かが出てきて欲しい。
｢あのひと、…っ何で刀もってるの、｣
｢……｣
｢かたな、…っ、｣
｢……｣
｢刀なんて持ってたら普通警察捕まるじゃん…っ、｣
あたしのその一言が決定的だったらしい。
狐がついに表情を変え、ぎゅっと眉に皺を寄せた顔であたしと、そして畳の上で未だ同じ姿勢の青年を交互に見、ついにその体を動かした。
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
