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次の日には、彼女は目を醒ました。
しかし、話を聞ける状態になったのは、
それから数日経った日のことだった。



大人しく喋ってくれるに越したことはなく、
女の扱いに慣れた蘭が話を聞くことに。





蘭 「気分はどうー?
痛いところは…って、全身痛いよな。


大変だったなぁ、…Aちゃん。」




彼女が横たわるベッドの隣、
蘭は、低い椅子に腰掛けて目線を合わせ、優しく聞き始めた。




部屋の扉の外には
三途が壁に背を預け、聞き耳を立てている。



竜胆と九井は、外せない仕事があり、
今日は不在。




『…あなた、は?
ど、うして、わたしの名前…?』



蘭 「あー…、そうだな…。
俺のことは、あの部屋から助けた奴の1人ってことで、とりあえず信用して?


Aちゃんの元いた会社に、
俺の知り合いがいて、名前はそこから。」



『…そう、でしたか…。』



蘭は、真実と嘘と隠し事を
上手く混ぜながら話をしていく。



蘭 「婚約して退職したのに、結婚の報告がないって
心配しててなぁ。


婚約者の名前を聞いたら、
何と、ヤブ医者で有名な男だったわけ。」



『えっ、ヤブ、医者だったんですか?!
あの人…。そんな、どうしよう…。』



蘭 「…どした?
とりあえずおにーさんに全部事情話してみ?
力になれると思うよ?」



彼女はゆっくり頷き、話を始めた。






同僚に紹介された時、精神科医だと聞き、
つい、母親が認知症で施設に入っていることを話した。



しかしその施設、スタッフの対応が良いとは言えず、
父親は既に他界しており、兄弟や頼れる親戚もいないため、悩んでいたことも。



すると、良い施設がある、自分なら少し融通してもらえると言ってくれた。
さらに自分と交際してくれるなら、
高額な利用料を負担してもいいとまで。



優しい看護師さんが常駐する施設に移った母親の、久しぶりの笑顔を見て、
ようやく肩の荷が下りたような気分だった。



そこからは言いなり状態。
彼を愛することは無かったが、それを補って余りある恩義があった。



しかし同棲が始まり、彼は態度を一変。
言う通りにしなければ、
施設の料金は負担しないし、そうなれば施設から追い出されるだろう、と。
仕事も辞めてしまった彼女に選択肢はなかった。



只管に言いつけを守り、暴力や理不尽に耐えながら、
ただ、部屋から彼がいなくなった後で
母親にはもう会えないのだろうかと
真っ二つのスマホの前で毎日泣いた。

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きりん。(プロフ) - 紫月_siduki??_さん» がんばります!ではでは(^^) (2022年11月15日 17時) (レス) id: 8c61cff3a5 (このIDを非表示/違反報告)
紫月_siduki??_(プロフ) - 頑張ってください(ง •̀_•́)ง (2022年11月15日 17時) (レス) id: 6f5f0e8f06 (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - 紫月_siduki??_さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます!このコメント欄でのやり取りを繋がってるって言うのかな?疎くてすみません…(^_^;)今作も楽しんでいただけるよう頑張りますね! (2022年11月15日 16時) (レス) id: 8c61cff3a5 (このIDを非表示/違反報告)
紫月_siduki??_(プロフ) - いや…すきで読んでるんで!!!キリンさんとは…本当に繋がりたいです((繋がってるのかな、? (2022年11月15日 16時) (レス) id: 6f5f0e8f06 (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - 紫月_siduki??_さん» 紫月さん、こんにちは。ありがとうございます。お手隙な時にでも、気軽にお読み下さると嬉しいです! (2022年11月15日 16時) (レス) @page23 id: 8c61cff3a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりん。 | 作成日時:2022年11月5日 18時

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