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初めて人を好きになり人の温もりを知った。
この人以外はいないと思ったけれど、お互いの身分に阻まれて諦めてしまった。
その後身分の高い母様と結婚をしてこうして国王になったけれど、今でもその人のことをふと思い出す。
そして今の私がそんな昔の自分に重なって見えたのだと、父様は静かにそんなことを語ってくれた。
私は父様とそんな話はもちろん、普通の親子のような会話すらしたことがなかった。
私の父様、それ以前にこの国の王なのだから、それは当たり前といったら当たり前なのだけど。
親子間の愛とかそんなものを感じたことは今まで一度もなかったし、王族間ではそれはもはや当たり前のことで。
けれど今こうして私に語りかけてくれる父様を見て、私は生まれて初めて、この人が自分の父なのだと実感した気がした。
「…父様、ありがとうございます。
私はジョングクが生きていてくれたら、それだけで本当に幸せです」
父様の過去、そして私の願いを尊重してくれた父様の思いに思わず涙がこぼれた。
「…泣くな。
私は、娘の命よりも国を守ることを選んだんだ。
お前の望みを叶えてやるのは、そんな罪滅ぼしだ」
父様は相変わらず静かにそう告げて、けれどその表情はどこか悲しみに歪んでいるように見えた。
それだけで、もう充分だと思った。
そうしてジョングクの身代わりとして、死刑予定の罪人があてがわれることになった。
幸いにも私の顔は知られていても、ジョングクの顔までは隣国に知られていなかった。
ジョングクを守ることができた。
そう安心するとともに、
ああ、私死んじゃうんだな。
なんてまるで他人事のように思った。
死ぬことが怖くない、なんてそんなことは到底言えない。
…怖い、怖くて怖くてたまらない。
愛おしい彼ともう二度と会えなくなるのがなによりも怖い。
けれど、絶対にジョングクに悟られてはいけない。
その思いが私を冷静に保ってくれた。
ジョングクは勝手にこんなことをして、あなたを置いていってしまう私を怒る?
…きっと怒るだろうな。
そしてそのあとたくさん泣くんだと思う。
けどね、ジョングク。
どうか分かってほしい。
自分の命に代えても、
あなたを守りたいと思う私の思い。
ジョングク、永遠に愛してる。
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作者名:ナノカ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月31日 19時